Glitters 障害者スポーツ専門ニュースメディア
2026年9月14日

2026 IWBF 車いすバスケットボール世界選手権大会

男子日本代表、無傷の3連勝で1位通過!快進撃を生んだ強さに迫る!

逆転への狼煙となるディフェンスにつながる3本目の3ポイントシュートを沈める香西宏昭 | 男子日本代表、無傷の3連勝で1位通過!快進撃を生んだ強さに迫る!|2026 IWBF 車いすバスケットボール世界選手権大会 | Glitters 障害者スポーツ専門ニュースメディア

逆転への狼煙となるディフェンスにつながる3本目の3ポイントシュートを沈める香西宏昭

9月9日(現地時間)に開幕した車いすバスケットボール世界選手権は、13日(同)には男子のグループリーグが終了し、14日(同)からは決勝トーナメントがスタートした。2大会ぶりに出場の男子日本代表は、同じグループCのスペイン(ヨーロッパ1位)、ポーランド(同6位)、コロンビア(アメリカ大陸3位)と対戦し、無傷の3連勝でグループ1位での決勝トーナメント進出を決めた。果たしてグループリーグでの快進撃から見えた日本の強さとはーー。

“18点差"からの大逆転劇に導いたディフェンス力

「ディフェンスで世界に勝つ」というスローガンを掲げ、世界選手権に臨んだ男子日本代表。まさにそれを体現したのが、初戦のポーランド戦だった。実はこの試合、出だしはチームの歯車がうまくかみ合わず、日本らしさが影を潜めていた。要因の一つはディフェンスにあった。コート上にラインを引くように、5人が横一列に並んで相手の走路をふさいで攻撃時間を削るフラットディフェンス。これが現在の日本がメインとしている戦術だが、間を割られて突破されてしまっていたのだ。

最大の強みとするディフェンスでリズムを作れない日本は、オフェンスも精細さに欠けた。一方、ポーランドの勢いは日本とは対照的に加速していった。1Q後半に入ると両チームの明暗はさらに色濃くなり、日本がフリースローの1点にとどまったなか、ポーランドはアウトサイドから鮮やかにミドルシュートを決め、流れを引き寄せた。1Qを終えて8-20。その差は2Qに入ると、この試合最大となる18点差にまで広がり、日本は早くも窮地に立たされた。すると京谷和幸ヘッドコーチ(HC)は、ある決断を下した。鳥海連志、赤石竜我、丸山弘毅(いずれも2.5)、古澤拓也(3.0)、香西宏昭(3.5)という日本ならではのミドルポインター5人をそろえたラインナップによるプレスディフェンスだ。決して高さはないものの、世界トップクラスのアジリティ、スピード、走力を持つ5人のプレスは、日本が世界に誇る武器の一つ。大事な初戦で訪れた窮地を救う打開策として、指揮官はそのカードを切ったのだ。

果たして、その采配は奏功した。1分もしないうちに相手のターンオーバーを誘い、得点につなげると、その後も8秒バイオレーションを奪うなど、守備力で相手を圧倒。オフェンスにもいいリズムが生まれ、2Qで8点差と1ケタにまで迫った日本は、3Q以降はスタートで起用することが多い主力のラインナップでもプレスを続けた。ただ、この日のポーランドにはやはり勢いがあり、2Q、3Qいずれも日本がポーランドのスコアを上回りながら、なかなか追いつくことができなかった。3Q中盤には3連続得点で3点差としたものの、後半に再び引き離され、3Qを終えて47-54。それでも京谷HCは選手たちを信じ切っていた。

「最後まで自分たちのバスケットをやり続ければ、必ず流れが来る」

すると、ついに“その時"が訪れた。4Q序盤、香西のこの試合3本目となる3ポイントシュートで再び1ポゼッション差に迫ると、その1分後には8秒バイオレーションを奪って相手の攻撃の芽を摘んだ。これを狼煙に、日本は一気に逆転へと突き進み、その後は引き離して逃げ切った。

試合後、京谷HCは課題は多いとしながらも、「自分たちには18点差を巻き返すだけのディフェンス力があることが再確認できたし、40分で勝つということを実践できた。この初戦を勝ち切った意義は大きい」とチームへの手応えを語った。

また、第1戦で課題だったフラットディフェンスにおいても、試合を重ねるたびに修正がかけられ、最後の第3戦では強敵スペインに対して、きれいなラインが引かれ、決して簡単にはゴール前でのプレーを許さなかった。プレスだけでなくフラットもヨーロッパ王者相手に機能したことで、日本の守備力が世界でしっかりと通用することを強く印象付けた。

快進撃で知らしめた得点力の進化

グループリーグで示した日本の強さは守備力だけではない。これまで課題とされてきた得点力という点においても、しっかりと結果を残した。

まず第1戦でチームをけん引したのが、香西だ。これまでも苦しい時間帯にこそ彼の存在感は大きく、ポーランド戦でも抜群の安定感と重要な局面で決める3ポイントシュートでチームに大きな力をもたらした。FG成功率59.1%で、3本の3ポイントを含む29得点をマークした香西に対し、京谷HCも「彼に助けられた部分が大きかった」と語っており、大逆転劇の立役者だったことは間違いない。グループリーグ全3試合すべてで2ケタ得点を誇った香西。ベテランとなった今もなお進化を遂げ続けており、頼れる存在だ。

続く第2戦で大きく飛躍した姿を見せたのが、秋田啓(3.5)だ。この試合、秋田はチーム最高のFG成功率88.9%で18得点とトップスコアラーとなった。特筆すべきは、3ポイントシュートで、2本いずれも決めてみせた。もともとインサイドに強い秋田だが、サイズの大きい海外勢に勝つには、やはりアウトサイドを磨かなければいけないとシュートレンジを伸ばしてきた。その成果として、今では3ポイントも武器としつつあることを印象付けた。試合後、「これを続けていくことが、チームのためになるし、また相手への脅威にもつながる」と秋田。その言葉通り、翌日のスペイン戦でも3ポイントを決め、現在グループリーグを通しての成功率は100%を誇る。さらに試合の強度が高くなる決勝トーナメントでも炸裂させるかが注目だ。
コロンビア戦では18得点のトップスコアラーに。進化したアウトサイドシュートを沈める秋田啓 | 男子日本代表、無傷の3連勝で1位通過!快進撃を生んだ強さに迫る!|2026 IWBF 車いすバスケットボール世界選手権大会 | Glitters 障害者スポーツ専門ニュースメディア

コロンビア戦では18得点のトップスコアラーに。進化したアウトサイドシュートを沈める秋田啓

そしてグループリーグ最終戦で、本領を発揮したのが鳥海だ。第1、2戦では時間を使ってチャンスメイクすることに注力していた印象だったが、この試合では一転、試合開始早々、ボールを持つと迷うことなく次々とシュートを放った。これには、明確な理由があった。

「ここまでの2試合、相手の守備が(自分に対して)出てこないといったことが多かったので、一度このへんでしっかりとシュートを狙って“出てこないなら、打ちますよ"というところを、スペインだけでなく他国に対して見せておきたいと思ったんです」

 もちろん単にアテンプトが増えただではない。鳥海はFG成功率50%で21得点を挙げてトップスコアラーとなり、しっかりと結果を残した。これで決勝トーナメントでは、相手は鳥海に対して出てこざるを得なくなるだろう。そうすれば、ディフェンスのマークが分散し、チームにとってチャンスメイクがしやすくなる。鳥海の狙いはこの決勝トーナメントを見据えてのものだったに違いない。
わずか約3分半の出場で6得点をマーク。短いプレータイムで確実に仕事をこなしたチーム最年長の藤本怜央 | 男子日本代表、無傷の3連勝で1位通過!快進撃を生んだ強さに迫る!|2026 IWBF 車いすバスケットボール世界選手権大会 | Glitters 障害者スポーツ専門ニュースメディア

わずか約3分半の出場で6得点をマーク。短いプレータイムで確実に仕事をこなしたチーム最年長の藤本怜央

そして、得点力を発揮しているのはこうしたトップスコアラーたちだけではない。第2戦ではチーム最年長の藤本怜央(4.5)が出場時間わずか約3分半の間にもフリースローを完璧に決めるなどして6得点。古澤拓也(3.0)も約5分半の間に8得点を挙げた。プレータイムは短くても少ないチャンスにしっかりと得点を決めてくれる選手の存在はチームにとって大きく、「ここからは総力戦でいかなければ勝てない」と京谷HCも語っていることからも、負けられない決勝トーナメントではより重要なピースとなるはずだ。

日本は、グループリーグ3試合で従来通りディフェンスが世界トップレベルであることを示しただけでなく、得点力も身に着けたことを印象付けた。しかし、ここからが本当の勝負でもある。グループCの1位となった日本は、決勝トーナメント1回戦はグループDの4位と対戦することが決定したが、その相手が開幕直前に棄権したイランであることから不戦勝となり、自動的に準々決勝進出が決まった。世界選手権の過去最高成績は7位の日本にとって、勝てば史上初のベスト4、そしてパラリンピックの出場枠をアジアオセアニアゾーンにもたらすことができる。

銀メダルを獲得した東京2020パラリンピック以来となる世界トップレベルのステージに挑む日本。真価が問われるのは、ここからだ。

(文・斎藤寿子/撮影・村上智彦、玉城萌華)
【車いすバスケットボール】
 一般のバスケットボールとほぼ同じルールで行われる。ただし「ダブルドリブル」はなく、2プッシュ(車いすを漕ぐこと)につき1回ドリブルをすればOK。
選手には障がいの程度に応じて持ち点があり、障がいが重い方から1.0~4.5までの8クラスに分けられている。コート上の5人の持ち点の合計は14点以内に編成しなければならない。主に1.0、1.5、2.0の選手を「ローポインター」、2.5、3.0、3.5を「ミドルポインター」、4.0、4.5を「ハイポインター」と呼ぶ。
コートの広さやゴールの高さ、3Pやフリースローの距離は一般のバスケと同じ。障がいが軽いハイポインターでも車いすのシートから臀部を離すことは許されず、座ったままの状態で一般のバスケと同じ高さ・距離でシュートを決めるのは至難の業だ。また、車いすを漕ぎながら、ドリブルをすることも容易ではなく、選手たちは日々のトレーニングによって高度な技術を習得している。
ジャンプはないが、ハイポインターが車いすの片輪を上げて高さを出す「ティルティング」という技がある。ゴール下の激しい攻防戦の中、ティルティングでシュートをねじ込むシーンは車いすバスケならではの見どころの一つだ。
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