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2025年11月1日

第42回日本パラ水泳選手権大会(WPS公認)

山口尚秀や辻内彩野ら世界選手権出場者が凱旋

男子100m平泳ぎで力強い泳ぎを見せた山口尚秀 | 山口尚秀や辻内彩野ら世界選手権出場者が凱旋|第42回日本パラ水泳選手権大会(WPS公認) | Glitters 障害者スポーツ専門ニュースメディア

男子100m平泳ぎで力強い泳ぎを見せた山口尚秀


第42回日本パラ水泳選手権大会が11月1日と2日の2日間、千葉県国際総合水泳場で開催され、男子、女子、混合の計40種目が行われた。日本代表が9つのメダルを獲得した(金1、銀3、銅5)シンガポール2025WPS世界選手権で活躍した選手も出場。山口尚秀(四国ガス)や辻内彩野(三菱商事)らが貫禄の泳ぎを見せた。第1日目をレポートする。

ベテランの石浦は4種目にエントリー


はじめに圧巻の泳ぎを披露したのは男子100m平泳ぎに登場した山口(S14)だった。世界選手権では同種目で大会新記録(1分03秒36)をマークして金メダルを獲得。実戦はそれ以来だったが、「力強いキックができたし、世界選手権と同じくらいのタイム(1分03秒41)で泳ぐことができた」と満足げな表情を浮かべていた。

パリパラでは3位に終わり連覇を果たせなかったものの、今季は自身の世界記録を更新する1分02秒64を叩き出すなど好調を維持。一番きれいなメダルも手にした。そんな山口に結果を出し続けるために大事にしていることを問うとこう答えた。

「積み重ねです。(先を見ることなく)キャリアの積み重ねを大切にすることが良い結果につながると思っています」


女子50m背泳ぎでアジア新記録を樹立した辻内彩野 | 山口尚秀や辻内彩野ら世界選手権出場者が凱旋|第42回日本パラ水泳選手権大会(WPS公認) | Glitters 障害者スポーツ専門ニュースメディア

女子50m背泳ぎでアジア新記録を樹立した辻内彩野


世界選手権で「銀」(女子100m自由形)、「銅」(50m自由形)の2つのメダルを手にしたS12の辻内は、女子50m背泳ぎと女子50mバタフライに出場。背泳ぎではアジア新(34秒21)をマークした(バタフライでは31秒95の大会新で種目別1位)。

辻内は「隣のレーンで泳いでいた(S12の)石浦智美さん(伊藤忠丸紅鉄鋼)が思っていた以上に速くて、大きな刺激になった。タイムは意識していなかった」とレースを振り返った。

また世界選手権については「メダルを取れた2つの種目はパリパラよりタイムが良かった」と納得しながらも「2位だった種目はトップとわずか0.2秒だったので」と悔しさものぞかせていた。

女子50m背泳ぎでS11世界新記録(暫定)を更新した石浦智美 | 山口尚秀や辻内彩野ら世界選手権出場者が凱旋|第42回日本パラ水泳選手権大会(WPS公認) | Glitters 障害者スポーツ専門ニュースメディア

女子50m背泳ぎでS11世界新記録(暫定)を更新した石浦智美


一方、辻内に「速かった」と言わしめた石浦は、その50m背泳ぎで34秒65の好記録をマークした。世界選手権では個人種目でのメダルを逃したが、その悔しさをぶつけるような泳ぎで、(S11での)世界新記録(暫定)を打ち立てた。

日本選手権では計4種目にエントリー。日本パラ水泳の「女子ブラインド」を引っ張っている石浦は「4種目泳ぐことで水の感覚がつかめるので」と、高い目的意識を持って臨んでいたことを明かした。
石浦はベテランの域に達しながらも自己ベストを更新中だ。その理由を尋ねると「日頃から自分の泳ぎの感覚に向き合うようにしています」と教えてくれた。

すでに来季を見据えている選手たち


世界選手権・男子400m自由形S11で銀メダルを獲得した富田宇宙(EY Japan)は男子100m自由形に登場。59秒39で種目別1位になった。
日本選手権は富田にとって「リスタート」の場でもあったようだ。「世界選手権後から新しいコーチがつき、フォームも大きく変えたなかでのレースでした」と言うと「決して速くはなかったが、自分のタイムに近いところまで持ってこれましたし、今後に向けて期待が膨らむレースになった」と続けた。

富田はパラ水泳や「ブラインドスイム」を広く知ってもらう活動にも力を入れている。

「個人としての講演や会社を通じてのセミナーを頻繁に行っています。それと(日本選手権の100m自由形と50m背泳ぎに出場した)高橋オリバーさん(S11)がタッピングやブラックゴーグルを用いて、ブラインドスイムへの理解を高めるイベントを定期的に開催しているので、僕も一緒にやらせてもらっています。こうしたアクションができるのは嬉しいですし、推進活動を通じていろいろなことを学ばせてもらってます」

富田から名前が挙がった高橋は事故で失明してからもスポーツマーケティングの仕事に従事している。海外のスポーツ文化にも詳しい。その視点から「日本は(ダイバーシティの観念が浸透している国と比べると)まだ、健常者と障がい者が同じ場でスポーツする環境が整っていないと感じる」と話していた。

男子100m自由形で1位となった富田宇宙 | 山口尚秀や辻内彩野ら世界選手権出場者が凱旋|第42回日本パラ水泳選手権大会(WPS公認) | Glitters 障害者スポーツ専門ニュースメディア

男子100m自由形で1位となった富田宇宙


世界選手権で日本代表チームの主将を務めたS8の窪田幸太(NTTファイナンス)は50m平泳ぎに出場。33秒14のタイムで種目別1位となった。世界選手権男子100m平泳ぎでは4位に。「メダルを期待されていたなか、結果ではけん引できなかった」と無念さをにじませていたが、日本選手権では堂々の泳ぎ。「来年も代表に選ばれたい」と前を向いていた。

世界選手権女子100m平泳ぎで7位入賞を果たしたS14の芹澤美希香(ミヤマエドルフィン)は、自身の専門種目ではない女子200m個人メドレーと女子100m自由形にエントリー。
来年を見据え、自分の可能性に挑んだ。「あまり練習はできていなかった」ようだが、100m自由形では自己ベストを更新(1分07秒72で種目別1位)。手応えをつかんでいた。

デフリンピック日本代表も出場


パラ水泳の大きな大会は12月に短水路で行われる「鈴木孝幸杯 Swim Fes 2025」が残っているが、選手たちの目はすでに来シーズンに向けられていた。来年10月には日本初開催となる「アジアパラ競技大会」がある。

男子50mバタフライに出場したS13の齋藤元希(スタイル・エッジ)はアジパラへの想いをこう語った(タイムは27秒52の日本新で種目別1位)。

「無観客の東京パラと有観客のパリパラの両方を経験したんですが、パリでは多くの観客の前で泳げる喜びを実感しました。今回のアジパラは自国開催なので、たくさんの方に見てほしいですし、パラスポーツを知ってもらえる機会になれば、と思っています」

他の選手も自国開催で有観客となるアジパラを心から楽しみにしているようだった。

女子100m自由形で1分09秒10をマークした吉田琉那 | 山口尚秀や辻内彩野ら世界選手権出場者が凱旋|第42回日本パラ水泳選手権大会(WPS公認) | Glitters 障害者スポーツ専門ニュースメディア

女子100m自由形で1分09秒10をマークした吉田琉那


他方、デフ(聴覚障害)のスイマーにとっては今月、大舞台が待っている。11月15日から始まる「東京2025デフリンピック」だ。日本選手権にはS15の吉田琉那(FUJIMI)やJDSAの吉瀬千咲(東京女子体大)らデフの選手も出場。吉田と吉瀬は女子100m自由形にエントリーした(吉田は1分09秒10で種目別1位、吉瀬は1分03秒33で種目別1位)。

スタートの浮き上がりを強みとする吉田は「注目される大会なので重圧もあるが、自己ベストを出して決勝に残りたい」とデフへの抱負を伝えてくれた。そして吉瀬は「日本選手権でのデフに向けての収穫は?」という質問に対し、「レース後半でもしっかり水をかけたこと」と伝えてくれた。

間もなくデフスイマーの「熱い秋」が始まる。

(文・上原 伸一/写真・湯谷 夏子)
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