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2025年11月21日

東京2025デフリンピック

陸上・男子ハンマー投げ、日本選手が表彰台を独占!

男子ハンマー投げの表彰台を独占した日本代表選手たち | 陸上・男子ハンマー投げ、日本選手が表彰台を独占!|東京2025デフリンピック | Glitters 障害者スポーツ専門ニュースメディア

男子ハンマー投げの表彰台を独占した日本代表選手たち


11月20日、聴覚障がい者による国際大会「東京2025デフリンピック」は大会6日目を迎え、大井ふ頭中央海浜公園陸上競技場では陸上・男子ハンマー投げの決勝が行われた。自己ベスト60m19をマークした遠山莉生が金メダルに輝き、森本真敏が56m04で銀メダル、石田考正が55m51で銅メダルを獲得。日本勢3人が表彰台を独占する快挙となった。

“世界最高峰の舞台"で自己新と勝負強さを見せた遠山


晴れ渡った秋空の下、3人の日本選手のプライドをかけた戦いが繰り広げられた。今や“お家芸"ともなった日本の男子ハンマー投げの第一人者である森本は、初出場の2009年台北デフリンピック(台湾)で金メダルを獲得。13年には63m71の世界新記録をマークし、今もその記録は破られていない。その森本をおさえて、前回22年カシアスドスルデフリンピック(ブラジル)で金メダルに輝いたのは石田で、昨年の世界選手権でも優勝している。

そんな偉大な先輩2人の背中を追いかけてきたのが、21歳、大学4年生の遠山だ。日本選手権では連覇を果たしており、すでにベテラン勢をしのぐ実力を持つ。しかし昨年の世界選手権では力を発揮することができず、銅メダル。日本選手が表彰台を独占したなか、「一番悔しい立ち位置だった」と言い、遠山にとって今大会はそのリベンジでもあった。

その遠山が、1投目から56m86とまずまずの記録を出してトップに立ち、石田も55m51で続いた。一方、森本はファウルとなり、2人に後れをとったが、2投目に54m10をマークして3位に浮上。この時点で日本勢3人が上位を占め、誰がどの色のメダルを獲得するかが注目された。

自己新記録で金メダルを勝ち取った遠山 | 陸上・男子ハンマー投げ、日本選手が表彰台を独占!|東京2025デフリンピック | Glitters 障害者スポーツ専門ニュースメディア

自己新記録で金メダルを勝ち取った遠山


そして、ハイライトは3投目に訪れた。遠山が自己ベスト59m04を大きく上回る60m19を記録。試合で60mの大台にのせたのは初めてのことだった。試合前から調子の良さは確かに感じていたという遠山。実は開幕1週間前には腰痛に苦しみ、不安もあったが、周囲からの手厚いサポートのおかげで「調子を取り戻すどころか、むしろ状態が上がっていた」。ただし、その要因は解明できていない。「60mを超えた感触はまったくなく、自分でもなぜあそこまで飛んだのかわからない」と遠山。まだ本番に向けてピークのもっていき方は模索中で、確実な方法はわかっていないのだという。

そんな自身も驚くパフォーマンスを披露した21歳の一投に刺激を受けたのだろう。筑波大学の先輩でもある森本も、3投目に54m54と記録を伸ばすと、4投目には56m04をマーク。石田を抜いて2位に浮上した森本は、雄たけびをあげてスタンドに向けて拳を突き上げた。

63m71の世界デフ記録を持つレジェンド森本 | 陸上・男子ハンマー投げ、日本選手が表彰台を独占!|東京2025デフリンピック | Glitters 障害者スポーツ専門ニュースメディア

63m71の世界デフ記録を持つレジェンド森本


一方、2投目以降、1投目の記録を出せずにいた石田だったが、5投目に1投目と同じ55m51を記録して調子を取り戻した、そして最後の6投目、最高のパフォーマンスを披露したいと考えたのだろう。石田は両腕を大きく振り上げて会場を盛り上げ、アドレナリン全開でサークルに入った。しかし、パフォーマンスをする前に1分間と定められた試技時間を超過してしまい、投げることができずに終わった。

結局、唯一の60m台を記録した遠山がデフリンピック初出場で金メダル。森本が銀、石田が銅と続き、まさに“お家芸"とばかりに日本選手が表彰台を独占する結果となった。

40歳・森本は今大会が「最後の挑戦」の可能性も


世界最高峰の舞台で自己ベストを更新するパフォーマンスを発揮し、昨年の世界選手権での借りを返すかのように偉大な先輩2人をおさえて王座についた遠山。しかし、21歳に驕りの気持ちは一切ない。

「日本人3人で表彰台を独占し、そのなかで自分が一番髙いところに立つという目標が達成できたことはとてもうれしいです。でも、自分がエースになれたとは思っていません。2人の先輩の方が経験値も高いですし、自分がここまで来られたのは、2人のおかげ。今でも不安な自分にいろいろと相談に乗ってくださる。そういう部分でも、まだまだ勝てない存在だなと思っています」

だからこそ、遠山はさらなる高みを目指す。大学最後の試合で森本が持つ世界記録63m71を更新し、さらに五輪日本代表選手など全国からトップアスリートが集結する日本選手権の申込資格記録64m75を狙うつもりだ。

森本は試合後の囲み取材で競技への想いを語った | 陸上・男子ハンマー投げ、日本選手が表彰台を独占!|東京2025デフリンピック | Glitters 障害者スポーツ専門ニュースメディア

森本は試合後の囲み取材で競技への想いを語った

一方、40歳の森本は「大好きなハンマー投げは続けたい」としながらも、次のデフリンピックを目指すかどうかは「わからない」と言い、「今大会は私にとって最後の挑戦で、それをたくさんの人に見ていただき、幸せだった」と語った。そして「最後の6回目の投てきが終わった後は、少し寂しい気持ちになった」と涙をぬぐった。

1歳年下で高校時代からの付き合いだという石田は、そんな森本の気持ちを聞き、「4年前のデフリンピックでは私が金メダルを取りましたが、世界記録保持者の森本さんに勝ったとは思っていません。それだけ自分にとって偉大な人で、森本さんがいるからチャレンジし続けられた。だからやめてほしくない。ぜひ続けてほしい」と語り、自身についても「挑戦はまだ終わっていません。4年後どうなるかわかりませんが、挑戦し続けていきたい」と意欲を示した。

果たして世界トップレベルの“三つ巴の戦い"は、今後どのような展開を見せるのか。日本が誇るアスリートたちの動向に注目がおかれる。

(文・斎藤 寿子/写真・湯谷 夏子、菅澤 一生)

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