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2025年12月14日

第27回車いすラグビー日本選手権大会

BLITZとFreedomが全勝で決勝進出

世界レベルのスピードバトルを繰り広げた島川慎一(右)とセバスチャン・ヴェルダン(左)。ヴェルダンは両チーム最多の31得点をマークした | BLITZとFreedomが全勝で決勝進出|第27回車いすラグビー日本選手権大会 | Glitters 障害者スポーツ専門ニュースメディア

世界レベルのスピードバトルを繰り広げた島川慎一(右)とセバスチャン・ヴェルダン(左)。ヴェルダンは両チーム最多の31得点をマークした

車いすラグビーのクラブチーム日本一決定戦「第27回車いすラグビー日本選手権大会」が、千葉ポートアリーナ(千葉県千葉市)で12月12日に開幕した。3日間にわたり開催される今大会には、予選を勝ち抜いた8チームが出場。大会2日目の13日には、予選ラウンド最終戦のほか準決勝が行われ、BLITZとFreedomが決勝へと駒を進めた。

3連覇に王手をかけたBLITZ

予選ラウンドは4チームずつ2つのプールに分かれて行われ、各プールの上位2チームが準決勝へと進んだ。4チームのうち3チームが前回大会のベスト4という、厳しいプールAを1位通過(3勝0敗)したのはBLITZ(東京)。日本選手権で10度の優勝を誇る強豪チームだ。そのBLITZとの準決勝に挑むは、プールB・2位(2勝1敗)のRIZE CHIBA(千葉、以下RIZE)。RIZEは、国際大会に出場し経験を積み上げているキャプテンの月村珠実と東京パラリンピック銅メダリストの今井友明、そこに今シーズンはフランス代表の主力メンバー、セバスチャン・ヴェルダンが加わり、チーム史上初となるベスト4進出を果たした。

大会3連覇を目指すBLITZは、島川慎一、池崎大輔、長谷川勇基のパリ・パラリンピック金メダルメンバー3名が入るラインナップをスタメンに起用。立ち上がりから次々とターンオーバーを奪って勢いに乗ると、8連続得点を挙げるなど、第1ピリオドで21-10とRIZEを大きく引き離す。第2ピリオドでRIZEが6連続得点を奪い反撃するも、メンバーチェンジを繰り返しながら全員ラグビーで戦うBLITZが主導権を握り続けた。

この試合で大きな見せ場となったのが、世界トップレベルのスピードスターたちによる競演だ。島川、池崎と同じ、クラス3.0のハイポインターであるヴェルダンは、世界トップクラスのスピードが持ち味のプレーヤー。島川vsヴェルダン、池崎vsヴェルダンと、日本が誇る両スピードスターとのマッチアップは、国際大会にも引けを取らない見ごたえあるシーンとなった。

ただ、BLITZはヴェルダンを自由に走らせない堅い守備で、相手を終始圧倒した。そうして60-48で試合終了。勝利したBLITZが決勝進出を果たし、大会3連覇に王手をかけた。チーム最多の21得点をマークした島川は、「RIZEにヴェルダンが加入し未知数なところがあったが、しっかりとミーティングを行い、こちらの戦略がはまった」と勝因を語った。

思わぬアクシデントに見舞われたFreedom対STORMERS戦

透暢(左)がHCを兼任するFreedomが安定したディフェンスで決勝への切符をつかみとった。STORMERSの橋本勝也(右)は大きな悔しさをにじませた | BLITZとFreedomが全勝で決勝進出|第27回車いすラグビー日本選手権大会 | Glitters 障害者スポーツ専門ニュースメディア

透暢(左)がHCを兼任するFreedomが安定したディフェンスで決勝への切符をつかみとった。STORMERSの橋本勝也(右)は大きな悔しさをにじませた

プールB・1位(3勝0敗)のFreedom(高知)と、プールA・2位(2勝1敗)のTOHOKU STORMERS(東北、以下STORMERS)による準決勝。奇しくも第25回大会から3大会連続で準決勝での対戦となった両者。前々回はSTORMERS、前回はFreedomが勝利を収め、今年はどちらに軍配が上がるのか注目の一戦となった。

池 透暢と白川楓也のパスレンジを活かしたFreedomのスペースラグビーに対し、STORMERSは、あうんの呼吸で繰り出される橋本勝也と中町俊耶の連係でトライを重ねていく。全チーム最少の6名のメンバーで今大会に臨んでいるSTORMERSは、ファーストラインとして戦い続ける今野匡人と横森史也の奮闘も光る。Freedomはディフェンスで相手のミスを誘い、ターンオーバーで流れを引き寄せ、15-12と第1ピリオドで3点のリードを奪った。

これ以上のリードを許すわけにはいかないと、くらいつくSTORMERS。そんな第2ピリオド中盤にアクシデントは起きた。ディフェンス側だったSTORMERSの橋本が何かの弾みで前方に大きく転倒、どうにか身を守る体勢をとったものの、そこから数分間、メディカルチェックにより試合が中断された。ゲーム再開後、いったんベンチに下がった橋本がすぐにコートに戻るも、その間に連続失点を浴びSTORMERSは引き離されていった。

どんよりとした空気が立ち込めるなか、Freedomは自分たちのラグビーに集中した。池、白川をコートに残しつつ、ローポインターを入れ替えながら最大11点差にまでリードを広げた。STORMERSは最終ピリオドで3つのターンオーバーを奪うなど全力を尽くすも、59-53で試合終了のブザー。Freedomが決勝進出を決め喜びに沸くなか、橋本は唇をぎゅっと噛みしめ何度も首を横に振った。

ヘッドコーチを兼任する池は、「序盤からいいディフェンスをして、自分たちの陣形を取ることができた。ローポインターもしっかりプレーしてくれたので、終始、安定した流れでいけた」と試合を振り返り、「正しいプレーをやっていれば、Freedomのスペーシングラグビーはそんなに崩れることはない」と、これまで地道に取り組んできたことへの自信ものぞかせた。第24回大会で悲願の初優勝を果たしたFreedomは、王座奪還目指す。

日本代表デビューを果たした新星・西村柚菜

車いす陸上との二刀流で世界を目指すGLANZの西村柚菜は、今年大きな注目を集めた | BLITZとFreedomが全勝で決勝進出|第27回車いすラグビー日本選手権大会 | Glitters 障害者スポーツ専門ニュースメディア

車いす陸上との二刀流で世界を目指すGLANZの西村柚菜は、今年大きな注目を集めた

各クラブチームのレベルが上がっていくなか、今大会ではCOAST(神奈川・千葉)とGLANZ(東京・埼玉)の2チームが、プレーオフを制し日本選手権への初出場を果たした。

COASTは今年度にチームを結成、GLANZは昨年度に設立と、どちらもできたばかりの新チームで、両チームに共通するのは、既存のプレーヤーのみならず、新たに車いすラグビーを始めた選手や、海外の代表レベルの選手たちが多く所属していることだ。

その中で今年、日本代表デビューを果たして存在感を示したのが、GLANZの西村柚菜だ。現在23歳の西村が車いすラグビーを始めたのは今年1月。大学生のときに車いす生活となってからは、車いす陸上に取り組んだ。幼少期から障がいを負うまで15年にわたりサッカーに励んでいたことから、もう一度チームスポーツがしたいとの思いから、車いすラグビーのトライアウトに参加。車いすがぶつかり合う激しさに楽しさと魅力を感じ、本格的に競技を始めた。

今年7月には、愛知県で開催された「2025ジャパンパラ車いすラグビー競技大会」に日本代表エキシビションチームのメンバーで出場。そして先月には日本代表として、タイで行われた「2025 ワールド車いすラグビー アジア・オセアニア チャンピオンシップ」で公式戦デビューを飾った。

今年1月に車いすラグビーの国際ルールが一部変更されたことも追い風となった。車いすラグビーではコート上4選手の持ち点の合計は8.0以内と定められており、女性選手が入る場合には1名につき0.5点の加算が許されていた。新ルールでは、クラス0.5から1.5の女性選手にはこれまで通り0.5が加算される一方で、クラス2.0~3.5の女性選手に対しては1.0の加算が許されることになった。クラス2.5の西村には、そのルールが大きなアドバンテージになるはずだ。ただ、「持ち点以上のプレーを出していければ」と、そのアドバンテージに甘えるつもりはない。

「走れて、パスもできて、キャッチもできる。そこをもっと磨いて、精度高く100パーセントでやれるようにして、自分の強みにしたい」目標は、「アメリカ代表の中心メンバーとして活躍するサラ・アダム(女性選手)」と明確だ。

車いす陸上との二刀流で、世界の舞台での活躍を目指す西村。車いすラグビーを始めて1年も経たない間に日本代表として活動するなど、今年は自身をとりまく環境が大きく変化した。

「自分の状況が二転三転していろいろと変わった1年間だったけど、車いすラグビーが楽しくて楽しくてしかたない。このまま楽しみながらラグビーができたら、それが一番。自分を出しながらプレーできたらいいなと思います」。希望に満ちた、とびっきりの笑顔で意気込みを語った。

西村が所属するGLANZは14日、本大会での1勝をかけてCOASTとの7-8位決定戦に臨む。このほか、決勝をはじめ順位決定戦が行われる大会最終日。どんなドラマが生まれるのか、大いに注目だ。

■試合結果(12月12日)
<Pool-A>
BLITZ ⚪︎42‐39⚫︎ Fukuoka DANDELION
TOHOKU STORMERS ⚪︎65‐40⚫︎ GLANZ
BLITZ ⚪︎64‐34⚫︎ GLANZ
TOHOKU STORMERS ⚪︎50‐39⚫︎ Fukuoka DANDELION

<Pool-B>
RIZE CHIBA ⚪︎51‐43⚫︎ AXE
Freedom ⚪︎60‐44⚫︎ COAST
RIZE CHIBA ⚪︎56‐50⚫︎ COAST
Freedom ⚪︎50‐46⚫︎ AXE

■試合結果(12月13日)
<Pool-A>
Fukuoka DANDELION⚪︎54‐33⚫︎ GLANZ
BLITZ ⚪︎57‐55⚫︎ TOHOKU STORMERS

<Pool-B>
AXE ⚪︎55‐48⚫︎ COAST
Freedom ⚪︎56‐43⚫︎ RIZE CHIBA

<順位決定戦>
AXE ⚪︎59‐44⚫︎ GLANZ
Fukuoka DANDELION⚪︎64‐28⚫︎ COAST

<準決勝>
BLITZ ⚪︎60‐48⚫︎ RIZE CHIBA
Freedom ⚪︎59‐53⚫︎ TOHOKU STORMERS

(文・張 理恵/写真・竹内圭 )
【車いすラグビー】
 四肢麻痺など比較的障がいの重い人でもできるスポーツとして考案された男女混合の競技。1チーム4人で、8分間のピリオドを4回行い、その合計得点を競う。バスケットボールと同じ広さのコートでプレーし、球形の専用ボールを使用する。ボールを持った選手の車いすの車輪2つが、敵陣のトライラインに乗るか、もしくは通過するかで得点が認められる。
 選手には障がいの程度に応じて持ち点があり、障がいが重い方から0.5~3.5までの7クラスに分けられている。コート上の4人の持ち点の合計は8点以内。ただし、女子選手が出場する場合は持ち点の加算が認められており、クラス0.5~1.5の女子選手には1人につき0.5点、クラス2.0~3.5の女子選手には1人につき1.0点が加算される。
「ラグ車」とも呼ばれる競技用車いすは「攻撃型」と「守備型」の2種類ある。主に障がいが軽い選手が乗る「攻撃型」は、狭いスペースでも動きやすいようにコンパクトな作りになっており、相手の守備につかまらないように凹凸が少ない丸みを帯びた形状となっている。一方、主に障がいが重い選手が乗る「守備型」は、前方に相手の動きをブロックするためのバンパーが付けられている。
パラリンピック競技で唯一、車いすによるタックルが認められており、「マーダー(殺人)ボール」という別名がつくほど、激しいプレーの応酬が魅力の一つ。その激しさは、ボコボコに凹んだ車いすのスポークカバーを見れば一目瞭然だ。
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