
今大会、卓球に初のメダルをもたらした“ダブル山田“ペア
聴覚障がい者による国際大会「東京2025デフリンピック」は大会5日目を迎え、東京体育館では卓球のダブルスが行われた。女子ダブルスでは、現役高校生で新エースの山田萌心とデフリンピック4大会連続出場の山田瑞恵の“ダブル山田"がメダルがかかった準々決勝で韓国ペアとの激闘を制し、会場をわかせた。準決勝では中国ペアに敗れたものの、今大会卓球では初の表彰台となる銅メダルを獲得した。
準々決勝、韓国ペアとの激闘を制した山田ペアに会場から大歓声!
山田萌心と、山田瑞恵のペアは2回戦から登場し、インドペアとの初戦をストレート勝ち。その余勢を駆って臨んだ準々決勝では韓国ペアとどちらも一歩も譲らない激しい攻防戦を繰り広げた。
最大のポイントとなったのは、ゲームカウント2-2で迎えた5ゲーム目だ。3-9と最大6点差となり、さらに相手のゲームポイントを迎えるという窮地に立たされた。しかし、ここから山田ペアは決して諦めず、一つ一つ丁寧に返していき、怒涛の6連続ポイントで、11-10。さらに一進一退の攻防が続いたなか、軍配が上がったのは山田ペアだった。12-13からラリー戦を制すると、3連続ポイント。15-13で制し、ゲームカウント3-2とした。

見事なコンビネーションで値千金の勝利をつかんだ山田萌(右)と山田瑞(左)
続く6ゲーム目、序盤は相手に主導権を握られ0-3とするも、4連続ポイントで一気に逆転して流れを引き寄せると、その後も2人で笑顔を見せながらポイントを積み重ねていった。最後は相手がサーブレシーブをミス。ボールが宙に高く浮いた瞬間、会場が大歓声に包まれた。
決勝では優勝した中国ペアにストレート負けを喫したが、銅メダルを獲得。山田瑞は「自国開催の大会でどうしてもメダルが欲しかったので、2人で力を合わせて取ることができてとてもうれしい」と語り、「シングルスでは金メダルが目標」と明日はさらに上を目指すと述べた。また前日の混合ダブルスに続いて中国ペアに敗れた山田萌は「2日間中国と対戦して、苦手な部分もわかってきた。中国に勝たなければ上には行けないと思うので、次は中国に勝てるように頑張りたい」と語り、シングルス、団体戦での勝利に意欲を示した。

メダルが期待されていたが、中国の壁に阻まれた亀澤理穂、木村亜美ペア
一方、デフリンピックではこれまで4大会で8個(銀3、銅5)のメダルを獲得している亀澤理穂と初出場の木村亜美は、初戦(2回戦)は貫禄のストレート勝ち。しかし、「力を合わせて中国を倒して金メダルを取りに行く」と語っていた準々決勝は、逆にストレート負けを喫した。1ゲーム目は先にゲームポイントとしたものの、逆転されて落とすと、2ゲーム目以降も競り負け、1ゲームも取ることができずにメダルを逃した。「(前日の混合ダブルスから)2日続けてメダルを逃すという結果となったが、これが自分の実力。中国の方が力が上だった」と亀澤理。木村は「デフリンピックの日本代表に内定してから1年以上、2人で練習に励んできた」と言い、悔し涙を流しながらも「最後まで諦めずに戦えたのは良かったと思う」と声を絞り出すようにして語った。
一矢報いるも、中国の壁に阻まれた男子ダブルス・伊藤、川口ペア
男子ダブルスでは、2回戦から登場した伊藤優希、川口功人ペアは、多彩なサーブでポイントを奪うなどして優位に試合を進め、4-0のストレート勝ちで初戦を白星で飾った。続く準々決勝では中国ペアと対戦。連盟の強化合宿以外にも2人で練習を重ねてきたという伊藤と川口。その成果を発揮し、1ゲーム目を3-11で落としたものの、2ゲーム目を11-6で奪い返し、試合を振り出しに戻した。しかし、3、4ゲーム目はいずれも先にゲームポイントとしながらも奪うことができず、5ゲーム目は5-11。ゲームカウント1-4で敗れ、ベスト8に終わった。

中国ペアから1ゲームを取るも力及ばなかった伊藤優希、川口功人ペア
前日に行われた山田萌との混合ダブルスに続いて準々決勝で中国ペアに敗れ、メダルを逃した川口は「中国の壁を感じた」と改めて卓球王国の強さを痛感。それでも「試合はまだ続くので、1本の大事さをかみしめながら戦っていきたい」と語り、気持ちを新たにシングルスに臨む決意を口にした。
この日、先陣を切って登場した男子ダブルスの亀澤史憲、灘光晋太郎ペアは1ゲーム目は3-7から逆転して先取。「一つも落としていいゲームはないので大事に戦った結果」と亀澤。灘光も「ただ自分たちの目の前のボールを追いかけていただけ」と高い集中力をうかがわせた。そのまま勢いに乗りたいところだったが、2、3ゲーム目を落とし、さらに4ゲーム目は10-6と先にゲームポイントを取ったが、そこから逆転を許した。
1ゲーム目とは逆に「レシーブの場面でこう返さなくちゃとこだわりすぎた」と亀澤。灘光も「目の前のボールを追いかけることよりも頭で“レシーブを取らなくちゃいけない"と考えることに意識がいってしまった」と反省を口にした。最後の5ゲーム目は出だしから主導権を握られ、流れを引き寄せることができず、ゲームカウント1-4で初戦敗退。ともに「シングルスに向けて気持ちを切り替えていきたい」と語った。
女子ダブルスでは準々決勝で亀澤理、木村ペア、準決勝では山田萌、山田瑞ペアにストレート勝ちした中国ペアが金メダル。男子ダブルスも伊藤、川口ペアが中国ペアに敗れており、2日続けて中国の高い壁に阻まれた。開催国の意地を見せ、シングルス、そして団体戦でのリベンジが期待される。
(文・斎藤 寿子/写真・湯谷 夏子)