約80の国・地域から3000人を超える選手が集結し、11月15日に開幕した東京2025デフリンピック。大会4日目の18日、駒沢オリンピック公園総合運動陸上競技場で行われた陸上競技では、男子100mで連覇を目指していた佐々木琢磨は銅メダル。男子400m準決勝では山田真樹、村田悠祐、足立祥史の日本人3人がそろって決勝進出を決めた。また最終日を迎えた男子十種競技では、岡部祐介が7位、堀口昂誉は9位となった。
佐々木、金メダルに0.05秒届かずも感じた確かな成長
前日の17日の予選では同じ組の選手がフライングで失格となり、仕切り直しのレースとなったものの、11秒08のタイムでフィニッシュした佐々木。組1着で予選を突破すると、18日の午前に行われた準決勝でも組1着で決勝に進出。10秒94のタイムは全体では5位だったものの、周りを見る余裕のある走りは前回大会金メダリストの貫禄がうかがえた。
その準決勝から約3時間半後に迎えた決勝レース。4レーンでスタートした佐々木はスタート直後に少し体勢を崩すと左隣のエストニアの選手にトップを奪われる展開に。さらにゴール手前で6レーンから追い上げてきた選手にも並ばれ、3人がほぼ同時になだれ込むようにしてフィニッシュ。佐々木はシーズンベストとなる10秒63という好タイムを出したものの、1位には0.05秒、2位にはわずか0.02秒届かず、銅メダル。金メダルを逃した悔しさに思わず両手を膝につき、目には涙をにじませた。
「金メダルを狙っていたので、本当に悔しかったです。スタートではいい感じだったのですが、加速がうまくできませんでした。力不足だったと思います」とレースを振り返った佐々木。それでも金メダルに輝いた3年前の前回大会の時と比べて成長も感じたという。
「東京デフリンピックはこれまでで一番レベルが高い大会で、前回は10秒75で金メダルを取ったが、今回は10秒63で銅メダル。そう考えると、自分もレベルアップしたと思います。また2021年の世界選手権では今大会金メダルのエストニアの選手が1位で自分が2位でしたが、その時は0.13秒差ありました。でも今回は0.05秒差。これも苦手な後半を練習してきた成果だと思います」
また、坂田翔悟は準決勝で組4着となったものの、10秒97は全体で8位となり、最後の枠を勝ち取る形で、前回大会には進むことができなかった決勝に滑り込んだ。その決勝では11秒04とタイムこそふるわなかったが、「家族や会社のたくさんの方に見ていただき、その中で自分が今できるパフォーマンスができた」と語り、「(400m)リレーでは必ず金メダルを取りたいと思います」と意気込みを語った。
男子400mは日本選手3人そろって決勝へ
準決勝が行われた男子400mでは、日本人3選手がそろって決勝に進出する快挙に会場がわいた。まずはじめに決勝を確定させたのは、第2組で2着に入った村田だ。第7レーンから勢いよく飛び出した村田は、最初のコーナーでトップに立つと、最後のコーナーで2人の選手に追いつかれて三つ巴の戦いに。先頭は譲ったものの2番目の位置をキープしてゴール。最後は後ろの選手を確認して2着であることを確信すると、右手をあげながら50秒37のタイムでフィニッシュした。
そして第3組で登場したのは、日本記録保持者で2017年のサムスンデフリンピック(トルコ)では銀メダルを獲得したエース山田。スタートから順調に加速していった山田は、第4コーナーでトップに立つと、そのまま後続を引き離してトップでゴール。「昨日の予選は全体的に動きが遅かったが、今日は最初から最後までスピードがある走りができた」と納得のいく走りだったといい、目標としていた50秒を切る49秒03の好タイムを出し、全体でもダントツの1位で決勝進出を決めた。さらに、第1組で3着となった足立もタイムで拾われ、ファイナリスト8人の中に入った。

全体1位で決勝に進出した山田には陸上第1号の金メダルに期待が寄せられる
日本人3人がそろって臨む決勝は19日15時15分にスタート。「ライバル同士ということになるが、最後まで3人そろって笑顔で終わりたい」と村田。足立も「3人で決勝を走れることがとても楽しみ」と語り、それぞれの最高のパフォーマンスに期待が寄せられる。なかでも注目は山田で、優勝すれば陸上では今大会金メダル第1号となる。
「明日は最高の喜びの瞬間が訪れると思っていますので、期待していてください」と山田。日の丸をイメージしたというヘアカラーの髪をなびかせ、東京の空の下を快走する。
(文・斎藤寿子/撮影・竹内圭、湯谷夏子)
【日本代表結果】
<男子100m 準決勝>
佐々木琢磨 10秒94(決勝進出)
坂田翔悟 10秒97(決勝進出)
冨永幸佑 11秒01(準決勝敗退)
<男子100m 決勝>
佐々木琢磨 10秒63(3位)
坂田翔悟 11秒04(7位)
<男子400m 準決勝>
足立佳史 50秒77(決勝進出)
村田悠祐 50秒37(決勝進出)
山田真樹 49秒03(決勝進出)
<男子1500m 予選>
樋口光盛 4分17秒63(予選通過)
齋藤丞 4分18秒23(予選通過)
中村大地 4分15秒72 (予選敗退)
<男子走高跳 決勝>
佐藤修佑 1m86(5位タイ)
井上幌太 1m80(10位)
高居千紘 1m65(12位)
<女子100m 準決勝>
生井澤彩瑛 13秒00(準決勝敗退)
猿樂彩香 13秒17(準決勝敗退)
<女子10000m 決勝>
安元真紀子 41分16秒69(8位)
<女子砲丸投 予選>
境橋真優 12m42(決勝進出)
<十種競技>
岡部祐介
100m(11秒88)
400m(52秒83)
走幅跳(6m27cm)
砲丸投(10m28cm)
走高跳(1m57cm)
110mH (16秒75)
円盤投 (25m07)
棒高跳 (3m00)
やり投 (35m90)
1500m (4分54秒39)
総合得点:5304点(7位)
堀口昂誉
100m(12秒47)
400m(58秒03)
走幅跳(5m68cm)
砲丸投(9m41cm)
走高跳(1m57cm)
110mH (19秒20)
円盤投 (27m83)
棒高跳 (3m10)
やり投 (40m47)
1500m (5分22秒44)
総合得点:4559点(9位)