Glitters 障害者スポーツ専門ニュースメディア
2024年3月9日

2024 日本パラ水泳春季チャレンジレース【1日目】

窪田幸太、宇津木美都らがパリ・パラリンピック日本代表推薦選手の座を獲得! ~2024 日本パラ水泳春季チャレンジレース(1日目)~

男子100メートル背泳ぎで「派遣A」基準記録を突破した窪田幸太 | 窪田幸太、宇津木美都らがパリ・パラリンピック日本代表推薦選手の座を獲得!
~2024 日本パラ水泳春季チャレンジレース(1日目)~
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男子100メートル背泳ぎで「派遣A」基準記録を突破した窪田幸太

3月9日、「2024 日本パラ水泳春季チャレンジレース」(1日目)が静岡県富士水泳場(静岡県富士市)で開催された。今大会は、8月に開幕するパリ・パラリンピック水泳日本代表推薦選手選考会を兼ねており、会場はパラリンピック出場を狙うパラスイマーたちの熱い思いと緊張に包まれた。

パリ2024大会に向け日本は、昨年7月の世界選手権(イギリス)銀メダル以上に与えられた出場枠(男子3、女子1)に、世界パラ水泳連盟からの配分を加えた、合計22(男子12、女子10)の出場枠を獲得している。代表選考にあたっては派遣基準記録をクリアすることが必須条件で、メダル獲得を想定した「派遣A」基準記録、入賞を想定した「派遣B」基準記録などと細かく設定されている。このうち「派遣A」基準記録を突破すれば、即時、推薦内定となる。
(※世界選手権の男子100メートル平泳ぎで金メダルを獲得した山口尚秀は、今大会・同種目の出場により推薦が決定する)

大会初日のレースで、日本代表推薦選手の第1号となったのは、S8(運動機能障がい)の窪田幸太(NTTファイナンス)だ。男子100メートル背泳ぎに出場した窪田は、大応援団の声援の中、前半からグイグイとレースを引っ張り、1分07秒41で「派遣A」を突破、パリへの切符をつかんだ。
レース後、「ほっとしています」と率直に心境を述べた窪田は穏やかに笑顔を浮かべた。今回の富士水泳場は2年前に窪田が自己ベストをマークした会場。そのときと同じような感じで、そのときの泳ぎを再現してみようと、2年前のレース映像を見て大会に臨んだ。

東京パラリンピック後に「泳ぎを変えた」という窪田。「両脚でキックをする部分を入れ、それによって楽に推進力を得られている」と話す。東京2020大会で掲げた“決勝ライン"という目標は、パリでは“メダルライン"へと高められた。
「1分04秒台が出れば金メダルは堅いと思う。パラリンピックまでに出場する大会で6秒台、5秒台と徐々にあげていきたい」
世界選手権で銀メダルを獲得した同種目で、表彰台の頂点を狙う。

女子100メートル平泳ぎでアジア記録を更新した宇津木美都 | 窪田幸太、宇津木美都らがパリ・パラリンピック日本代表推薦選手の座を獲得!
~2024 日本パラ水泳春季チャレンジレース(1日目)~
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女子100メートル平泳ぎでアジア記録を更新した宇津木美都

その窪田にも劣らない、充実した笑顔で会見場に現れたのは、女子100メートル平泳ぎで「派遣A」を突破したSB8(運動機能障がい)の宇津木美都(大阪体育大学)だ。同じくSB8クラスの福田果音(KSGときわ曽根)とデッドヒートを繰り広げた宇津木は、福田を0秒16上回るタイムで50メートルをターンすると、その後も快調にレースを進め1分25秒23のアジア新記録をマークした。
「中学3年生のとき以来、7年ぶりに自己ベストが出せてすごくうれしい。福田選手に取られていたアジア記録を塗り替えることができてうれしい」と声を弾ませた。

これまでの自己ベストを1秒以上も更新できた要因を、宇津木はこのように語る。
「1月上旬に出場した試合での課題を分析し、健常者のトップ選手の映像を見たりして自分の泳ぎに生かした。水泳に対して真面目に取り組み、2月頃からは健常者の大会(短水路)でベストを順調に更新した。分析と結果で自信を積めたのがこの記録につながった」
パフォーマンスの好調さが、メンタルにもプラスに働いた。
「これまでの選考会の中で一番、自信のあったレースといっても過言ではない。自信が7割、緊張が3割という状態でレースに臨めた」
「派遣A」基準記録を切り自らの力でパラリンピック出場を決めてやる、その目標を有言実行してみせ、大きな達成感を漂わせた。

そして宇津木とは対照的に、涙で声を震わせた福田。
「めちゃくちゃ悔しい。この代表選考会のためにタイムを狙ってきて、自分でもベストを出せるくらいの力をつけてきていると思っていたが、全然ダメでめちゃくちゃ悔しい。今はその言葉しか出てこない」
これまでは宇津木に先行して50メートルをターンする形だったが、この日のレースでは隣のレーンで先にターンされたのが見えて、焦ったという。早く行かなければ…という気持ちが前に出てしまい、泳ぎが硬くなったと振り返る。
「ここで決めなければいけないというプレッシャーや緊張に勝てなかった。(宇津木選手に)負けたことも悔しいが、強く狙ったレースで力が出せない、プレッシャーに対する自分の弱さを感じたのが悔しかった」
記録は1分26秒94。派遣B基準記録を突破したが、ゴールの瞬間、涙があふれ出た。

けれども、ここからまた立ち上がるのが福田果音というスイマーだ。
「この悔しさをバネに、パリではメダルを狙っていきたい。そして、アジア記録を奪い返し、自分の記録に変えたい」
宇津木と福田、この先も良きライバルとして競い合いが続きそうだ。

堂々とした泳ぎでアジア新記録を叩き出した川渕大耀 | 窪田幸太、宇津木美都らがパリ・パラリンピック日本代表推薦選手の座を獲得!
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堂々とした泳ぎでアジア新記録を叩き出した川渕大耀

先輩たちに続けとばかりに、次世代を担う若手選手も力強い泳ぎを見せた。
男子400メートル自由形では、S9(運動機能障がい)の川渕大耀(宮前ドルフィン)が4分20秒63で自己ベストとアジア記録を塗り替え、「派遣B」基準記録をきった。
中学3年生、この春から高校生になる川渕はレースを終え、「緊張する大舞台で自己ベストを出すことができて率直にうれしい」と初々しい表情で語った。
世界選手権の出場がかかった昨年の日本代表選考会では、派遣記録を切れずに悔しい思いをした。苦い思い出はあったが、「自分の力を出し切ろう」と強い気持ちで挑んだ。
この日は朝起きたときから緊張していたというが、1年前の自分に見せつけるかのように、堂々としたパフォーマンスを披露した。

幼稚園のときに水泳を始め、小学生のころに現在も所属するスイミングクラブ「宮前ドルフィン」に入った。
「自分と同じチーム(で、年齢が3歳上)の日向 楓選手(S5・運動機能障がい)が東京パラリンピックに出場して、決勝に残って世界の選手たちと戦っているのを見て、自分もそこに立ちたいと思った」
仲がよく一緒に遊びに行くこともあるという日向を、尊敬していると話す。
「僕はレース前に緊張しやすいので、どうしようって質問したら『気持ちでいけよ!』っていつも言ってくれる。自分の弱いところを最後まで支えてくれているのは彼の言葉です」
左脚の大腿を小学2年生のときに切断した川渕の強みは、「キックが多くてストロークが長い」泳ぎ。パリ・パラリンピック出場となれば、「決勝に残って、世界のライバル選手がたくさんいる舞台で一段階のぼれるようにがんばりたい」と目標を語った。

男子50メートル自由形では、ベテランのS4(運動機能障がい)鈴木孝幸(GOLDWIN)が、37秒86で「派遣A」基準記録を突破し、パラリンピック6大会連続出場を確実なものとした。また、男子100メートル平泳ぎでは、同種目のレース出場により推薦選手となったSB14(知的障がい)の山口尚秀(四国ガス)が「派遣A」基準記録を上回る1分3秒62のタイムでフィニッシュした。

歓喜と涙、緊張と安堵が交差したパリ・パラリンピック日本代表選考会1日目。翌3月10日に実施される2日目の結果を受け、推薦選手が発表される。
パラリンピックの切符とともに、自己ベストを目指すパラスイマーたちの熱い戦いに注目だ。


(文・張 理恵 / 写真・鈴木 奈緒)


【水泳】
 大きく分けて「肢体不自由」「視覚障がい」「知的障がい」のカテゴリーがあり、自由形、平泳ぎ、背泳ぎ、バタフライ、個人メドレー、メドレーリレー、フリーリレーの7種目。それぞれ障がいの程度に応じたクラスに分かれてタイムを競う。
使用するプールやスタート台は、一般の水泳と同じ。ただし、障がいを考慮して、一部ルールを変更して行われている。例えば、視覚障がいのクラスでは、ターンやゴールの際にプールの壁に衝突しないように、コーチが「タッピングバー」と呼ばれる棒で選手の体をタッチして合図をする「タッピング」が行われる。また、両腕が欠損しているなど、障がいによってスタート時に体勢が不安定な場合は、用具を使用したり、コーチなどによって体を支えられることが認められている。
 選手はそれぞれ自分自身の体の状態にあった泳ぎ方を開発し、さまざまな工夫が凝らされている。たとえば、視覚障がいの選手は、日常の練習で方向をつかむ感覚を養うとともに、レーンロープを頼りにして、少しでもロスを少なくしようと努めている。
窪田幸太、宇津木美都らがパリ・パラリンピック日本代表推薦選手の座を獲得!
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