Glitters 障害者スポーツ専門ニュースメディア
2026年8月23日

2026 WWR車いすラグビー世界選手権大会

3位決定戦でイギリスを下し日本は銅メダル獲得

銅メダルを獲得した車いすラグビー日本代表。来年にはパリンピック出場権のかかるアジア・オセアニア選手権が待ち構える | 3位決定戦でイギリスを下し日本は銅メダル獲得|2026 WWR車いすラグビー世界選手権大会 | Glitters 障害者スポーツ専門ニュースメディア

銅メダルを獲得した車いすラグビー日本代表。来年にはパリンピック出場権のかかるアジア・オセアニア選手権が待ち構える

ブラジル・パラリンピック・トレーニングセンター(サンパウロ)を舞台に熱戦が繰り広げられている「2026 WWR車いすラグビー世界選手権大会」は8月23日、大会最終日を迎えた。イギリスとの3位決定戦に臨んだ日本は、ここまで積み上げてきた自分たちのラグビーを貫き、全員が出場して54-47で勝利。予選ラウンドから全8試合を終え、銅メダルを獲得した。

世界選手権最終戦、全員ラグビーで戦い銅メダル獲得

3位決定戦でプレーヤー・オブ・ザ・マッチを受賞した池透暢。クラス3.0のベスト・プレーヤー賞も受賞した | 3位決定戦でイギリスを下し日本は銅メダル獲得|2026 WWR車いすラグビー世界選手権大会 | Glitters 障害者スポーツ専門ニュースメディア

3位決定戦でプレーヤー・オブ・ザ・マッチを受賞した池透暢。クラス3.0のベスト・プレーヤー賞も受賞した

イギリスの先制点でスタートした第1ピリオド。長いパスが飛び交う、コートを広く使った早いテンポのラグビーが展開され、13-13の同点で第2ピリオドへ。
ピリオド開始早々、日本のインバウンドの場面でプレッシャーを受けるも、浮いたボールをローポインターの倉橋香衣がキープし攻撃をつなげる。そのスコアから、今度は相手の流れたパスを壁谷知茂がカットしてターンオーバー。さらに2つのターンオーバーを奪い、25-23で前半を終えた。

第3ピリオド。倉橋の好守備が光る。イギリスのミッドポインターを(相手の)バックコートのコーナー近くで押さえミスマッチを作り、その間に苦し紛れに投げられたボールを日本がカットし1点を追加した。日本はその後も次々とターンオーバーを重ね、6点をリードする。しかし今度は、日本のインバウンドやパスミスも出て、慌ただしく試合が進んでいく。
そんな中、大きな見せ場となったのが池透暢と壁谷の連係だ。ピリオド残り8.6秒。ラストゴールを狙うべくタイムアウトを取ったイギリスは、フロントコートから試合再開。イギリスのインバウンドが入ってすぐに選手がコート外へと出て、リービング・ザ・コートのファウルにより日本ボールに。
残り2.9秒。日本のバックコート側のサイドラインでボールを構える池。そこから目の覚めるようなロングパスが、誰もいないコートをスッと斜めに18メートルほど渡り、走ってきた壁谷がキーエリア付近でクリーンキャッチして、そのままトライ。わずか0.6秒のビッグプレーに会場が大きく沸いた。その直後イギリスも1点を返し、39-35で最終ピリオドを迎えた。

第4ピリオド。スタートで若山英史、中盤の日本7点リードの場面で西村柚菜がコートに送り込まれる。そして試合時間残り2分30秒には、鈴木康平と草場龍治もコートに立ち、メンバー全員が出場した。最後は池のトライで試合終了。54-47で勝利を収め、日本は銅メダルを獲得した。

今大会で手応えを得たバランスライン

大会を通して高いパフォーマンスを見せた橋本勝也は、クラス3.5のベスト・プレーヤー賞に輝いた | 3位決定戦でイギリスを下し日本は銅メダル獲得|2026 WWR車いすラグビー世界選手権大会 | Glitters 障害者スポーツ専門ニュースメディア

大会を通して高いパフォーマンスを見せた橋本勝也は、クラス3.5のベスト・プレーヤー賞に輝いた

予選ラウンドから3位決定戦まで全8試合を戦い終え、中谷英樹ヘッドコーチは「世界の強豪に対して通用した部分がたくさんあった」と手答えを口にした。一方で、「もっと安定感をつけていきたい。そして、最後は細かい部分での勝負になってくるので、その細かい部分をしっかり分析して洗い出して修正していきたい」と、今後の課題について語った。

現在の日本代表にとって大きな武器となっているが、ラインナップのバリエーションだ。例えば、3位決定戦ではイギリスが4つのラインナップで戦ったのに対し、日本は8つのラインナップをコートに送り込んだ。この試合の後、中谷HCは「いろいろなラインナップを使いながら相手を上回れたことはすごくよかった」と振り返った。

今大会では、倉橋香衣が1年半ぶりに日本代表に復帰したことで復活した、池 透暢―池崎大輔―中町俊耶-倉橋のラインが高いパフォーマンスを見せたほか、長谷川勇基―中町俊耶―壁谷知茂-橋本勝也のラインも躍動した。どちらもカギを握るのはミッドポインターで、中町、壁谷のプレーを中谷HCも高く評価した。
中町と壁谷が同時に入るバランスラインは時間をかけて強化してきたラインナップのひとつで、実戦でうまくいかない時期も経験しながら、少しずつ成長を遂げてきた。橋本によると、今年6月のカナダカップではなかなかうまくいかなかった部分があったというが、世界選手権に向けて「質を求めてプレーしてきた。自分たちとしても自信につながっている」と話し、万全な準備をして今大会に臨んだことが十分にうかがえた。

ローポインターの代わりにミッドポインターが入ることで、(ハイポインターのほかに)ボールを運べる選手が1人増えることになり、よりダイナミックにオフェンスが展開できる。

また、同じ持ち点2.0の選手でも中町は攻撃用、壁谷は守備用の競技用車いすを乗っているのも大きな特徴で、倉橋が入るラインに中町と壁谷のどちらを起用するかで色を変えることができるのも、攻撃や守備に変化を与えるという部分で大きな意味を持つ。対戦相手がバランスラインを出してきたら、こちらもバランスラインを迷わず出せると、ヘッドコーチの信頼も得ている。今後、このバランスラインをはじめ、どんなラインナップが日本に勝利をもたらすのか楽しみだ。
中町俊耶の入るラインナップは日本の大きな武器になっている。より磨きのかかったバランスラインに今後も期待だ | 3位決定戦でイギリスを下し日本は銅メダル獲得|2026 WWR車いすラグビー世界選手権大会 | Glitters 障害者スポーツ専門ニュースメディア

中町俊耶の入るラインナップは日本の大きな武器になっている。より磨きのかかったバランスラインに今後も期待だ

日本は、さらなる進化を誓い2年後のロスへ

世界選手権を終え、選手たちが見据える先は2年後のロス・パラリンピックだ。チームのみならず一人ひとりが今大会で課題を得て、成長する糧にしようとしている。

キャプテンの小川仁士は、「世界の持ち点1.0の実力を見せられ、スピードもパスの精度もパスレンジも、自分はまだ足りないということを思い知らされた大会になった。すべての試合で1つ以上の学びを得られたので、この経験を積み重ねていきたい。まだまだラグビーのことを分かっていないと感じたので、どんどん勉強して、いろいろな引き出しを作っていきたい」と力強く語った。

そして、準決勝の試合直後には「何が間違っていたのかな」と失意のどん底にいた橋本勝也だが、一夜明け、頼もしくこう語った。
「今回の世界選手権で課題が明確になった分、ロスまでの2年間、その一つひとつに磨きをかけたい。その先に、誰にも止められない自分、そういった自分がいるチームを作り上げることができると考えたらワクワクしている。この2年の成長、進化というものを、多くの方々に見てもらいたい」

来年には、パラリンピックの出場権がかかるアジア・オセアニア選手権が開催され、いよいよパラリンピック本番に向けた準備が本格化する。車いすラグビー日本代表がどんな道のりを経て、ふたたび栄光をつかむのか。大いに注目したい。

【日本代表全試合結果】
予選プールB
第1戦:日本 〇 60 - 44 ● ドイツ
第2戦:日本 〇 56 - 43 ● デンマーク
第3戦:日本 〇 62 - 48 ● イギリス
第4戦:日本 〇 50 - 45 ● フランス
第5戦:日本 〇 61 - 42 ● コロンビア
5戦全勝(プールB・1位通過)

準々決勝  日本 〇 58 - 44 ● オランダ
準決勝   日本 ● 49 - 50 〇 アメリカ
3位決定戦 日本 〇 54 - 47 ● イギリス

最終順位:3位

(文・張 理恵/写真・竹内圭)
【車いすラグビー】
 四肢麻痺など比較的障がいの重い人でもできるスポーツとして考案された男女混合の競技。1チーム4人で、8分間のピリオドを4回行い、その合計得点を競う。バスケットボールと同じ広さのコートでプレーし、球形の専用ボールを使用する。ボールを持った選手の車いすの車輪2つが、敵陣のトライラインに乗るか、もしくは通過するかで得点が認められる。
 選手には障がいの程度に応じて持ち点があり、障がいが重い方から0.5~3.5までの7クラスに分けられている。コート上の4人の持ち点の合計は8点以内。ただし、女子選手が出場する場合は持ち点の加算が認められており、クラス0.5~1.5の女子選手には1人につき0.5点、クラス2.0~3.5の女子選手には1人につき1.0点が加算される。
「ラグ車」とも呼ばれる競技用車いすは「攻撃型」と「守備型」の2種類ある。主に障がいが軽い選手が乗る「攻撃型」は、狭いスペースでも動きやすいようにコンパクトな作りになっており、相手の守備につかまらないように凹凸が少ない丸みを帯びた形状となっている。一方、主に障がいが重い選手が乗る「守備型」は、前方に相手の動きをブロックするためのバンパーが付けられている。
パラリンピック競技で唯一、車いすによるタックルが認められており、「マーダー(殺人)ボール」という別名がつくほど、激しいプレーの応酬が魅力の一つ。その激しさは、ボコボコに凹んだ車いすのスポークカバーを見れば一目瞭然だ。
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