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2026年10月23日

愛知・名古屋2026アジアパラ競技大会

車いすバスケ男子日本代表、強豪イランを撃破!史上初の連覇を達成!

前回大会に続く連覇を果たし、金メダルを手に笑顔を見せる車いすバスケットボール男子日本代表 | 車いすバスケ男子日本代表、強豪イランを撃破!史上初の連覇を達成!|愛知・名古屋2026アジアパラ競技大会 | Glitters 障害者スポーツ専門ニュースメディア

前回大会に続く連覇を果たし、金メダルを手に笑顔を見せる車いすバスケットボール男子日本代表

23日、愛知国際アリーナでは車いすバスケットボールの男子決勝が行われ、男子日本代表はイランと対戦した。1Qこそリードを許したものの、2Q終盤に逆転した日本は、何度も1ポゼッション差に迫るイランの反撃をかわし、55-47で勝利。前回大会に続いて金メダルに輝き、アジアの頂点に立った。

流れを変え、逆転に導いたシックスマンの活躍

今大会のイランは、シュート力のあるビッグマンたちが勢ぞろいしていた。既存のアブディ・モルテザ(3.0)、サヤリ・モハンマドハサン(4.0)に加えて、ハディアズハル・オミッド(4.0)が2024年1月のアジアオセアニアチャンピオンシップス(AOC)以来の代表復帰となり、さらには2016年リオデジャネイロパラリンピック以来、実に10年ぶりに代表の舞台に戻ってきたヴァヒド・ゴラマザード(4.5)の姿もあった。

そんなイランを前に、「自分が代表としてやってきたなかで、最強のメンバーだったので、どう立ち向かおうか、正直試合前はすごく悩んだ」と髙柗義伸(4.0)が語れば、ドイツリーグでプレーしている赤石竜我(2.5)はゴラマザードが主力としてプレーする強豪クラブチームにトラウマになるほどの大敗を喫した経験があると言い、「オミッドに加えてヴァヒドまでいて、正直尻込みした部分はあった」と吐露した。

そんなふうに選手たちが思わず身構えてしまうほどの難敵に対し、若い日本が武器としたのは、日本が誇るディフェンスだった。日本はフラットディフェンスで相手の攻撃時間を削り、ハーフコートに戻ってからは徹底的にインサイドをケアした。その日本のディフェンスに、イランは翻弄され、1Qの出だしからターンオーバーを繰り返すなどして思うように得点を取れずに苦しんだ。

ただ、日本も放ったシュートがことごとくリングに嫌われ、重苦しいスタートとなった。結局、1Qは立て直し切れず、フィールドゴール(FG)成功率はイランの38%を大きく下回る18%と低迷し、7-12とリードを許した。しかしその裏では、1Qの終盤、古澤拓也(3.0)と川原凜(1.5)が入ったのを機に、日本は流れをつかみ始めていたことも確かだった。
シックスマンとして流れを変え、2Qには逆転の3ポイントシュートを決めた古澤拓也 | 車いすバスケ男子日本代表、強豪イランを撃破!史上初の連覇を達成!|愛知・名古屋2026アジアパラ競技大会 | Glitters 障害者スポーツ専門ニュースメディア

シックスマンとして流れを変え、2Qには逆転の3ポイントシュートを決めた古澤拓也

すると2Q、引き続き古澤と川原が入ったラインナップで臨んだ日本は、フラットに加えてプレスも織り交ぜたディフェンスでイランの攻撃を完全に封じ、わずか4得点に抑えた。日本のディフェンスの強さを象徴した展開に、赤石はチームメイトをこう称えた。

「交代で入ってきた古澤選手、川原選手がめちゃくちゃいいディフェンスをしてくれました。シックスマンの役割を担う選手が大きな仕事をしてくれるチームは強いんだなということを改めて感じました」

ディフェンスで流れを引き寄せた日本は、徐々にオフェンスにもリズムが生まれ始めた。赤石の連続得点で1ポゼッション差、そして髙柗のフェイダウェイシュートで1点差に迫ると、立て続けにターンオーバーを犯すイランをしり目に、古澤が3ポイントシュートを炸裂し、ついに逆転に成功した。ボールがネットに吸い込まれた瞬間、大勢の観客が詰めかけたスタンドからは大歓声があがり、会場は興奮の渦に包まれた。その大歓声は古澤にも聞こえていたと言い、「観客の方々がすごく盛り上がってくれてうれしかった」と語る。そして何より古澤がうれしかったのは、ベンチのチームメイトたちが大喜びしている姿だった。

結局、2Qは13-4とイランの得点を大きく上回った。またターンオーバーは日本が1だったのに対し、イランは11。さらにスティールはイランの1に対し、日本は6と、攻防にわたってイランを圧倒した日本は、20-16とわずかながらリードして試合を折り返した。

チームスローガン“魄繋"を胸に、全員でつなげた40分間

3Qに入っても、日本のディフェンスはイランを苦しめた。前半5分間でイランが得点したのはフリースローでの2点のみ。FGは8分の0と完全に沈黙した。ところが3Q終盤、警戒していたハイポインター陣にインサイドへの侵入を許し、4連続失点。最大13点あった日本のリードは一気に3点にまで激減し、31-28で最後の4Qを迎えた。

その4Qも前半は日本が優位に進め、再び日本のリードは9点にまで広がった。しかし、やはりイランは簡単には勝たせてくれなかった。試合時間残り5分を切ると、じりじりと点差を縮め、残り2分半で再び3点差にまで迫った。ここで日本はベンチに下げていた古澤と川原を投入。これが奏功し、流れを引き寄せた日本は、髙柗、古澤、赤石と3連続得点の猛攻を見せ、残り40秒で再び9点差にまで引き離した。

最後はファウルゲームに一縷の望みをかけたイランに対し、鳥海連志(2.5)が6分の4という高確率でフリースローを決め、突き放した。イランも3ポイントシュートで反撃するも、日本がそのまま逃げ切り、55-47で競り勝った。

結局、両チームともにFG成功率は上がり切らず、日本が33%に対し、イランも34%。さらにリバウンドも日本が42に対し、イランは45と互角だった。一方、ターンオーバーはイランの高さとリーチの長さにいつものパスが通らないなど苦戦した日本も14を数えたものの、イランはそれを大きく上回る24にまでのぼったことからも、いかに日本のディフェンスに翻弄されたかがわかる。特に警戒していた一人、準決勝までの平均得点がチーム2番目の12を数えていたヴァヒドからの得点をわずか4に抑えたことが、勝因の一つとなったことは間違いない。

京谷和幸HCも「オフェンスではなかなかリズムがつくれないなかでも、インサイドを守るというディフェンスを40分間やり続けてくれた。最後はわれわれのディフェンスの勝利だったと思います」と語り、戦略プランを遂行し続けた選手たちを称えた。

また、気持ちの部分での勝因について、キャプテンの川原はこう語る。

「チームスローガンである“魄繋(はっけい)という言葉には、辛い時間帯でも一人ひとりがチームのためにやるべきことをやり続け、40分間、全員でつないでいこう"という意味合いがあります。その言葉を試合前にもう一度チームで確認しあいました。実際、追い上げられた時も、ベンチにいる選手や、コーチ、スタッフを含め全員で気持ちを一つにつないだ。それが大きな勝因だったと思います」
チームスローガン“魄繋"を胸に、40分間全員でつなぐことを貫いたキャプテンの川原凜 | 車いすバスケ男子日本代表、強豪イランを撃破!史上初の連覇を達成!|愛知・名古屋2026アジアパラ競技大会 | Glitters 障害者スポーツ専門ニュースメディア

チームスローガン“魄繋"を胸に、40分間全員でつなぐことを貫いたキャプテンの川原凜

若手の台頭と海外挑戦で激化する代表争い

この試合でチーム最多の16得点を挙げたのは髙柗だ。本人は「オフェンスでは貢献できなかった」と謙遜するも、最も大事な4Qでは4本すべてのシュートを決める圧巻のパフォーマンスを披露した。イランの高さにも屈することなく、インサイドからもシュートをねじ込む力強さでチームを後押しした髙柗。京谷HCも「彼のゴールアタックで相手ディフェンスのラインが下がり、そこからいいオフェンスの形を作れたし、速攻にも走ってバスケットカウントという場面もあった。彼の得点能力は上がってきていて、日本にとって非常に大きな武器になっている」と語った。

そして、決勝ではFG成功率18%という結果となった鳥海について記者から質問をされると、指揮官はこう述べた。

「今日は得点という部分では積極的に狙いにいった結果としてリングに嫌われましたが、周りを生かすプレーもできますし、なによりディフェンス面での貢献度は非常に大きい。今日も彼がいなければ、おそらく何本もやられていたシーンがあった。ディフェンスでは鳥海と赤石の2人は私の中では絶対に外せない。鳥海は今大会、前半は得点で、中盤はアシストで、そして決勝ではディフェンスでチームを引っ張ってくれた。私の中での高い評価はまったく変わりません」

また、4人の新戦力や、9月の世界選手権では活躍の場を得られずに終わった選手、世界選手権の代表選考から漏れた選手についても「それぞれの持ち味を発揮した大会だった」と振り返った京谷HCは、こう期待を寄せた。

「世界選手権からメンバーを5人入れ替えたなか、若い選手が台頭し、しっかりと勝ち切ることができたことは、チームの底上げにつながっていくと思います。ただ、あくまでもここがスタート。今大会をきっかけにして、選手間での競争が始まるので、お互いにいい刺激を与えあいながら強化を進めてもらいたいと思います」
イランの高さにも屈せず、チーム最多の16得点を挙げた髙柗義伸 | 車いすバスケ男子日本代表、強豪イランを撃破!史上初の連覇を達成!|愛知・名古屋2026アジアパラ競技大会 | Glitters 障害者スポーツ専門ニュースメディア

イランの高さにも屈せず、チーム最多の16得点を挙げた髙柗義伸

今大会を終えた直後には、ヨーロッパのリーグに参戦するために海を渡る選手も少なくない。キャプテン川原もその一人だ。今シーズンから赤石と同じドイツ1部リーグのケルン99ersでプレーする。川原が目指すのは、イギリス代表のアブディ・ジャマ(1.0)やポーランド代表のアンジェイ・マチェク(1.5)だ。「彼らのように得点源になれるローポインターとして名を連ねたいと思ったのが、海外に行こうと思ったきっかけ」と川原。世界に通用するローポインターとなって、来年、日本代表争いに加わるつもりだ。

また、昨シーズン初めてドイツリーグでプレーした髙柗は、今シーズンはイタリアリーグに参戦する。チームメイトには、今大会でも対戦した韓国のエース、キム・ドンヒョン(4.0)が在籍する。「インサイドでの体の使い方や得点の取り方は参考になる選手なので、いろいろと吸収したいと思います」と髙柗。長い間、アジア屈指のクラス4.0として君臨してきたキムのプレーを間近で見ることで自らの成長につなげるつもりだ。

今大会で若手が台頭し、また海外リーグでプレーする選手が多くいるなか、代表争いはますますし烈さを増すことは間違いない。だが、こうした選手間競争の激化が、チームの底上げになるはずだ。ロサンゼルスパラリンピックへの出場権がかかるAOCまで、残り約1年。男子日本代表がさらに進化を遂げられるかは、この1年、一人ひとりがどう過ごすのかにかかっていると言っても過言ではない。

果たして1年後、男子日本代表はどんな成長を遂げて“負けられない戦い"に挑むのか。ロスへのカウントダウンは、もう始まっている。

(文・斎藤寿子/撮影・村上智彦、中島功仁郎)
【車いすバスケットボール】
 一般のバスケットボールとほぼ同じルールで行われる。ただし「ダブルドリブル」はなく、2プッシュ(車いすを漕ぐこと)につき1回ドリブルをすればOK。
選手には障がいの程度に応じて持ち点があり、障がいが重い方から1.0~4.5までの8クラスに分けられている。コート上の5人の持ち点の合計は14点以内に編成しなければならない。主に1.0、1.5、2.0の選手を「ローポインター」、2.5、3.0、3.5を「ミドルポインター」、4.0、4.5を「ハイポインター」と呼ぶ。
コートの広さやゴールの高さ、3Pやフリースローの距離は一般のバスケと同じ。障がいが軽いハイポインターでも車いすのシートから臀部を離すことは許されず、座ったままの状態で一般のバスケと同じ高さ・距離でシュートを決めるのは至難の業だ。また、車いすを漕ぎながら、ドリブルをすることも容易ではなく、選手たちは日々のトレーニングによって高度な技術を習得している。
ジャンプはないが、ハイポインターが車いすの片輪を上げて高さを出す「ティルティング」という技がある。ゴール下の激しい攻防戦の中、ティルティングでシュートをねじ込むシーンは車いすバスケならではの見どころの一つだ。
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