
3大会連続の銀メダルを手にした車いすバスケットボール女子日本代表
22日、愛知国際アリーナでは車いすバスケットボールの女子決勝が行われ、女子日本代表は中国との再戦に臨んだ。予選での敗戦を生かし、相手エースの得点を抑えようと試みた日本だったが、中国の圧倒的なシュート決定力に翻弄され続けた。またオフェンスでは中国のプレスディフェンスに苦戦。遠い距離からのタフショットを余儀なくされ、思うように得点を伸ばすことができなかった。攻防にわたって終始、中国に主導権を握られた日本は25-75で敗れ、4大会ぶりの金メダルには届かなかった。
中国には力及ばずも、1年半越しの成果が得られた大会に
日本が中国に勝利するための最大のポイントとしたのは、5日前の予選でフィールドゴール(FG)成功率83%という驚異的な確率で20得点を挙げられたエースのチャン・シュエメイ(4.0)を抑えることだった。
1Qの序盤、ディフェンスはしっかりと機能していた。シュエメイにはハイポインターがマークし、さらにシュートエリアに入られた際にはダブルチームでいくなどして十分に苦しめていた。そのため、試合の入りで連続得点を奪われた予選の時とは違い、この日は3分半もの間、シュエメイからの得点はなかった。
しかし、試合が進むにつれてタフショットをも決めてくるようになったシュエメイの勢いを止めることができなくなっていった。翻って日本は、中国のプレスディフェンスに苦戦を強いられた。持ち味であるはずのスピードや走力は影をひそめ、フロントコートにボールを運ぶことにも苦しんだ。そのためハーフコートで十分に展開することができず、ショットクロックが迫るなか、ほとんどがアウトサイドからのタフショットしか打たせてもらえなかった。
9月の世界選手権では全試合でチーム最多得点を誇った北田千尋(4.5)も徹底的にマークされ、「ノーマークのシュートはほとんど打たせてもらえなかった」と厳しい状況が続いた。2Qは1本もシュートを打たせてもらえなかった北田に代わり、得点源として奮闘したのが網本麻里(4.5)だった。持ち前のスピードと俊敏性を生かして、苦しみながらも中国の強固なディフェンスの穴をこじ開けるようにして貴重な得点を挙げた。

9月の世界選手権で全試合チーム最多得点を挙げ、この日は徹底的にマークされた北田千尋
それでも中国との差は開く一方で、前半を終えて、FG成功率は中国の73%に対して、日本は20%。シュエメイには90%の高確率で18得点を奪われ、10-38で試合を折り返した。
後半は中国に主導権を握られたままではあったものの、前半は無得点だった北田が6得点、さらに柳本あまね(2.5)はチームで唯一の3ポイントシュートを決めるなどして、日本は全力を振り絞って戦い続けた。しかし、予選では20分ほどのプレータイムだったシュエメイをはじめ、スタートの5人のうち3人を40分間フル出場させるなどして最後まで手を緩めなかった中国との差は開く一方で、反撃には至らなかった。
最も警戒していたシュエメイにFG成功率86%、26得点を奪われるなど、予選に続けて中国に力が及ばなかった日本は、25-75で敗れた。試合後、添田智恵ヘッドコーチは「しっかりと対策をたてて臨み、選手たちは実行してくれたものの、精度が十分ではなかった」と語り、「時間はありませんが、まずは基本的な車いす操作の部分の土台を上げていくところに注力していきたいと思います」と、約1年後に迫ったロサンゼルスパラリンピックの予選に向けての課題について言及した。
その一方で大会を通しての収穫は決して小さくはなかったと言い、手応えについて次のように述べた。
「中国戦ではうまくはいきませんでしたが、それ以外の試合ではディフェンスの精度を高めることができました。最初は一定の距離を保ちながらコンテインで守り、ハーフラインからは強くプレッシャーをかけていくという緩急をつけたディフェンスを1年半以上かけて練習してきたのですが、ようやく今大会で初めてできたので、私がやろうとしていることが少しずつ選手に浸透してきたかなと感じています。また、スタートで出したりと若手を多く起用したことで、彼女たちも経験をつめたと思いますので、そういう意味でもチームとして大きな収穫だったと思います」
網本麻里「どこでバスケをしようと成長できるかは自分次第」
今大会で印象的だったのは、アジアのレベルが確実に上がっているということだ。今大会でのスタッツがそのことを物語っている。例えば3ポイントシュートにおいて、成功本数では日本は中国と同じ9本だったが、確率では19%だった日本は3番目。中国の31%に次ぐ27%としたのは、最終順位では6カ国中5位だったカンボジアだった。またフリースローで中国の45%を凌ぐ52%の確率を誇ったのは銅メダルのタイ。27%にとどまった日本は6カ国中5位という結果だった。さらに相手に最も多くターンオーバーを誘ったのはタイで、日本の91、中国の76を大きく上回る132を数えた。
その一方で日本がアジアトップの力を示し、速攻からの得点で2位中国の38を大きく上回る60を誇った。今後は中国のようにハイプレスをかけてくる相手に対して、どうブレイクし、スピードを生かした展開へともちこんでいくかが課題となる。
世界選手権、そして今回のアジアパラで浮き彫りとなった課題は多く、克服することは決して容易ではない。約1年後に迫ったアジアオセアニアチャンピオンシップス、そして世界最終予選に向けて、日本はどこまで立て直しをはかることができるのか。海外リーグにチャレンジする選手が増えている男子日本代表を例にした質問を記者から投げかけられた網本は、自身の経験を踏まえ、「海外に行くだけがすべてではないと思う」と次のように述べた。

対策を実行しながらも精度を高めきれなかった決勝。円陣を組んで修正を図る女子日本代表
「海外に行くかどうかは個人の選択なので、行きたいと思ったら行っていいと思います。ただ、行ったからと言って必ず試合に出られる保証はありません。私自身も試合にまったく出られないシーズンを何度も経験しました。海外に行くなら、その覚悟も必要です。ただ試合経験を積むということであれば、女子の場合は国内でも大きくて速い男子選手と対戦することができる。それこそ日本では女子の強化指定選手でチーム(強化指定選手を中心に構成される選抜チーム「リルブロッサム」)を作って、国内の大会に出ているので、AOCやレペチャージまで約1年と考えたら、国内に残って実戦の経験を積みながらチームメイトとの連携をあわせていくことも必要なのかなと。いずれにしても、どこでやろうと成長できるかは自分次第。今大会でそれぞれの選手が悔しいと思う部分があったと思うので、それを忘れずにどれだけうまくなりたいと思えるかだと思っています」
課題の多さは伸びしろととらえることもできる。果たして女子日本代表は、残り1年でどのようにして成長を遂げていくのか。新たな試みとして昨年からスタートしたリルブロッサムの活動にも注目したい。
(文・斎藤寿子/撮影・菅澤一生)
【車いすバスケットボール】
一般のバスケットボールとほぼ同じルールで行われる。ただし「ダブルドリブル」はなく、2プッシュ(車いすを漕ぐこと)につき1回ドリブルをすればOK。
選手には障がいの程度に応じて持ち点があり、障がいが重い方から1.0~4.5までの8クラスに分けられている。コート上の5人の持ち点の合計は14点以内に編成しなければならない。主に1.0、1.5、2.0の選手を「ローポインター」、2.5、3.0、3.5を「ミドルポインター」、4.0、4.5を「ハイポインター」と呼ぶ。
コートの広さやゴールの高さ、3Pやフリースローの距離は一般のバスケと同じ。障がいが軽いハイポインターでも車いすのシートから臀部を離すことは許されず、座ったままの状態で一般のバスケと同じ高さ・距離でシュートを決めるのは至難の業だ。また、車いすを漕ぎながら、ドリブルをすることも容易ではなく、選手たちは日々のトレーニングによって高度な技術を習得している。
ジャンプはないが、ハイポインターが車いすの片輪を上げて高さを出す「ティルティング」という技がある。ゴール下の激しい攻防戦の中、ティルティングでシュートをねじ込むシーンは車いすバスケならではの見どころの一つだ。