Glitters 障害者スポーツ専門ニュースメディア
2026年10月16日

愛知・名古屋2026アジアパラ競技大会

新戦力、若手が躍動した車いすバスケットボールは男女そろって白星発進!

相手の手が伸びる中でもゴール下へ果敢に飛び込む塩田理史 | 新戦力、若手が躍動した車いすバスケットボールは男女そろって白星発進!|愛知・名古屋2026アジアパラ競技大会 | Glitters 障害者スポーツ専門ニュースメディア

相手の手が伸びる中でもゴール下へ果敢に飛び込む塩田理史

10月16日、国内初開催のアジアパラ競技大会は18日の開会式を前に一部の競技がスタート。愛知国際アリーナでは車いすバスケットボールの予選が行われ、男子日本代表は中国に76-38、女子日本代表もイランに65-20で快勝し、そろって初戦を勝利で飾った。

クラス3.0唯一無二の存在、塩田理史が魅せたインサイドの強さ


大会連覇を目指す男子日本代表は、試合開始早々に鳥海連志(2.5)の先制シュートが決まり、リードを奪った。ところがその後は思うように得点を伸ばすことができず、その間に中国が猛追。キャプテン、ファン・シュナン(4.0)の3本の3ポイントシュートだけで10-9とあっという間に1点差に迫った。結局1Qは15-13と日本のリードはわずか2点にとどまり、この時点で勝負の行方はまったくわからなかった。

しかし、日本には世界に誇る武器があった。ディフェンスだ。2Q、フラットからプレスに切り替えると立て続けに8秒バイオレーションを奪うなどして主導権を握った。結局、1Qでは11得点を奪われた中国のキャプテンには一度も得点を許さなかった。

するとオフェンスにもリズムが生まれた。先月の世界選手権で「もともとの武器である3ポイントにもう一度こだわっていきたい」と語っていた古澤拓也(3.0)が有言実行とばかりに、連続で3ポイントシュートを決め、チームの勢いを加速させた。その後3Qには2アップ、そして4Qにはハーフコートと多彩なディフェンスで中国を翻弄した日本は、76-38と大勝。大会連覇に向けて、大事な初戦を白星で飾った。

そしてこの試合は4選手が日本代表デビューを果たし、男子日本代表にとって新しい一歩を踏み出した一戦でもあった。先陣を切ってコートに立ったのは、塩田理史(3.0)だ。2022年の男子U23世界選手権では、鳥海、赤石竜我(2.5)、髙柗義伸(4.0)という東京2020パラリンピック銀メダルメンバーとともに男子U23日本代表の主力としてプレー。当時からカットインを得意とし、体勢を崩しながらのタフショットもねじ込む強靭なフィジカルを強みとしていた塩田。「数少ないインサイドプレーヤーとして、しっかりと体を張り、相手の体力を削るのが役割」という塩田のプレースタイルはクラス3.0では唯一無二と言ってもいい。

その塩田が、U23を卒業して4年目にして代表の座をつかんだ今大会、日の丸を背負って公式戦に出場すること自体が22年以来4年ぶりとあって、「最初は緊張して、体も動かない状態のままプレーしてしまった」と悔しさをにじませた。それでも鳥海など先輩たちから「インサイドに入ったらパスを出すから」と言われていたと言い、積極的にインサイドにアタックし続けた結果、1Q終盤にはゴール下からのシュートを決めて代表初得点。3Qには相手からファウルをもらってフリースローで得点するなど、持ち前のプレーを発揮した。

北風、9年越しにつかんだ悲願の代表デビューで「自分を信じて良かった」


続いて初めて公式戦のコートに立ったのが、男子日本代表の副キャプテンを務める北風大雅(4.5)だ。「ようやくたどり着いた舞台」という北風の言葉からも、これまでの苦労の大きさがうかがい知れる。

北風の身体能力の高さは早くから注目が置かれ、車いすバスケを始めて1年も経たない2017年11月には、北九州チャンピオンズカップに男子U23日本代表として出場した。しかし、それ以降は試練の連続だった。トップカテゴリーの日本代表候補にあたる男子ハイパフォーマンス強化指定選手に選出されるまで5年を要し、それ以降も公式戦では補欠メンバーに名を連ねるシーズンが続いた。

ディフェンス2人に挟まれながらも、高い打点からシュートを放つ北風大雅 | 新戦力、若手が躍動した車いすバスケットボールは男女そろって白星発進!|愛知・名古屋2026アジアパラ競技大会 | Glitters 障害者スポーツ専門ニュースメディア

ディフェンス2人に挟まれながらも、高い打点からシュートを放つ北風大雅


気づけば、17年に初の国際舞台を経験してから9年が経ち、大学生だった北風も28歳。同世代の選手が代表の中心となって活躍するなか、自分は一度もメンバー入りさえしていないという厳しい現実に「何度もくじけそうになった」という。それでも「自分を信じてきた」と北風。9年間、諦めることなく努力を重ねながら代表の座まで這い上がってきた。北風の素質の高さを最初に見抜き、期待を寄せてきた京谷和幸ヘッドコーチ(HC)からも「ようやく漢になれるな」という言葉をもらったという。

初戦は気負いすぎて動きが硬く、納得のいくプレーができなかったが、「緊張していることを自覚しながらプレーするというのもいい経験になった」と北風。ただ「次はそういう言い訳はできないので、2戦目以降はしっかりと自分のパフォーマンスを出してチームに貢献したいと思います」と次戦に向けての意気込みを語った。

岩田、圧巻のシュート力で驚異のFG成功率86%


最後の4Qにそろって代表デビューを果たしたのが、谷口琢磨(2.0)と岩田晋作(4.5)だ。ともに昨年のU23世界選手権に出場したメンバーで主力として活躍。キャプテンを務めた谷口は攻守にわたって欠かせない存在として40分間フル出場するなど指揮官からの信頼も厚かった。一方の岩田は爆発的な得点力のあるハイポインターで、U23のアジアオセアニアチャンピオンシップス(AOC)ではオールスター5に輝くなど、この世代のエース的存在でもある。

落ち着いた表情でボールを持ち、相手との間合いを測る岩田晋作 | 新戦力、若手が躍動した車いすバスケットボールは男女そろって白星発進!|愛知・名古屋2026アジアパラ競技大会 | Glitters 障害者スポーツ専門ニュースメディア

落ち着いた表情でボールを持ち、相手との間合いを測る岩田晋作


ベンチにいる間、「ずっと試合に出たいという気持ちでいた」という岩田。その一方で「いつも通り配信を見ながら日本を応援しているような感覚もあった」という。そんななか、4Qのスタートの一人に自分の名前を呼ばれた時には「やっと出番が来た!せっかくのチャンス、やれることはすべてやろう!」と思いながらコートに立ったという岩田は、その言葉通り、磨いてきたアウトサイドのシュートを次々と炸裂。7本中6本を決め、9分46秒というプレータイムで鳥海の19得点に次ぐ12得点、FG成功率86%はチームトップの数字を誇った。

一方で「課題はディフェンス」だと言い、「すぐにスキルが上がるわけではないけれど、それでもがむしゃらに食らいついて何としても止めてやろうという気持ちでいきます」と気合いは十分だ。

果たして、今大会で代表デビューした4人は少ないチャンスをモノにし、ロスを目指すチームに新風を巻き起こすことができるのか。代表争いはますますし烈になりそうだ。

“代表落選"を成長に変えた小島と西村


またイランとの初戦に臨んだ女子日本代表は、1Qから攻守にわたって試合の主導権を握り、22-4と圧倒的な強さを見せた。2Qの前半も何度も8秒バイオレーションを奪うなど、ラインディフェンスが機能。リードは最大22点差まで広がった。

ところが、2Qの後半に入ると流れは一転、イランへと傾き始めた。3連続得点を奪われた後には、ノーマークで走られるなどディフェンスが崩れたことに加えて、オフェンスでは最大の得点源である北田千尋(4.5)がベンチに下がると、日本の得点がピタリとやみ、北田頼りになっている現状が露呈した形となった。結局、2Qは8-10とイランの得点を下回り、前半20分のFG成功率もイランの37%を下回る32%となった。

すると後半、なかなかリズムに乗り切れないチームを鼓舞するかのように若手が活躍。なかでも小島瑠莉(2.5)のプレーが光った。前半は無得点だったが、「先輩たちから“どんどん打っていいよ"と言ってもらえたので、気持ちが落ちることなく打ち続けることができた」という。すると、3Q終盤に連続得点。さらに4Qには3ポイントシュートを含む6得点を挙げた。その結果、小島はプレータイム20分足らずで11得点。後半はFG成功率50%を誇った。

迷いなくシュートを放ち、若い力でチームを勢いづけた小島瑠莉 | 新戦力、若手が躍動した車いすバスケットボールは男女そろって白星発進!|愛知・名古屋2026アジアパラ競技大会 | Glitters 障害者スポーツ専門ニュースメディア

迷いなくシュートを放ち、若い力でチームを勢いづけた小島瑠莉


西村葵(1.5)とともに、10代でパリ2024パラリンピックに出場した小島だが、今年の世界選手権にはメンバーから外れ、悔しい思いをした。それでも「先輩たちのプレーを見て鼓舞された」と言い、世界選手権の間もトレーニングに励んだ。一回り大きくなった体からも、どれだけ努力してきたかは一目瞭然で、小島は悔しさを糧に成長して日本代表に戻ってきた。

その小島と同じく世界選手権の代表入りを逃した西村は「ただただ悔しい気持ちで世界選手権を見ていた」が、「世界のレベルがすごく上がっている」と感じたことで、「練習するしかない」と自然と気持ちは次に向かっていったという。特に自分と同じローポインターのアウトサイドのシュート力の高さを感じ、トレーニングに励んだ。その結果、世界選手権の大会期間中に3ポイントシュートが届くまでにシュートレンジを伸ばすことに成功。今後はシュート力もある世界基準のクラス1.5を目指す。

同世代でカクテルのチームメイトでもある2人は、「絶対にアジパラで結果を残そう!」と励まし合いながら練習を積み重ねてきた。「チームのためになることを徹底してやり抜き、成長の跡を残す」ことが2人の共通した今大会の目標だ。若い2人がチームの追い風となるかに注目したい。

(文・斎藤寿子/撮影・佐渡本実穂、菅澤一生)

【車いすバスケットボール】
 一般のバスケットボールとほぼ同じルールで行われる。ただし「ダブルドリブル」はなく、2プッシュ(車いすを漕ぐこと)につき1回ドリブルをすればOK。
選手には障がいの程度に応じて持ち点があり、障がいが重い方から1.0~4.5までの8クラスに分けられている。コート上の5人の持ち点の合計は14点以内に編成しなければならない。主に1.0、1.5、2.0の選手を「ローポインター」、2.5、3.0、3.5を「ミドルポインター」、4.0、4.5を「ハイポインター」と呼ぶ。
コートの広さやゴールの高さ、3Pやフリースローの距離は一般のバスケと同じ。障がいが軽いハイポインターでも車いすのシートから臀部を離すことは許されず、座ったままの状態で一般のバスケと同じ高さ・距離でシュートを決めるのは至難の業だ。また、車いすを漕ぎながら、ドリブルをすることも容易ではなく、選手たちは日々のトレーニングによって高度な技術を習得している。
ジャンプはないが、ハイポインターが車いすの片輪を上げて高さを出す「ティルティング」という技がある。ゴール下の激しい攻防戦の中、ティルティングでシュートをねじ込むシーンは車いすバスケならではの見どころの一つだ。
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