第24回全日本パラ・パワーリフティング選手権

田中秩加香が日本新記録で堂々優勝！ 築地本願寺で繰り広げられた大熱戦

12月9日〜10日、「第24回全日本パラ・パワーリフティング選手権大会」が築地本願寺第二伝道会館(東京都中央区)で行われた。
全国から女子12名、男子17名の合計29名が集結し、20代の若手から50代のベテランまで幅広い層の選手がしのぎを削りあった。

2日間に渡る本大会では、佐藤芳隆(男子97Kg級)、龍川崇子(女子61Kg級)、田中秩加香(女子79Kg級)、光瀬智洋(男子59Kg級)の4名が日本記録を更新した。

その中でも特にめざましい活躍を見せたのが39歳の田中秩加香だ。
昨年春に競技を始めたばかりの田中。今年1月に行われた前回の全日本選手権では73kg級に出場し、その時点で新人としては異例の80kgをあげていた。しかしその後も類を見ないスピードで成長していた田中。本大会、第一試技でまず87kgを記録し、それまでの日本記録を8kg更新。第三試技では92kgを成功させた。そして最後の特別試技で95kgにチャレンジし、難なく成功。最終的にこれまでの日本記録を16kgも塗り替える結果となった。田中は結果を振り返って「気持ちを強く持つことができて成功に繋がった。すごく嬉しかった」と話した。
パラ・パワーリフティングについては「記録が伸びてる面白さがある」と語った田中。2024年のパリパラリンピックに出場するため、まずは国際試合で記録を残していきたいと話した。


昨年度に引き続き、築地本願寺というスポーツの大会としては異例の場所で開催された本大会。
日本パラ・パワーリフティング連盟ヘッドコーチの吉田進氏は、築地本願寺という場所を2大会連続で大会会場として選んだ理由について、「スポーツは体育館でなければできないという常識をぶち破りたかった」と話した。

今回は築地本願寺の御本尊である阿弥陀如来像の横に、選手たちが競技を行うステージがセッティングされた。
競技前には僧侶による祈祷が行われたり、競技中も選手が阿弥陀如来像に手を合わせたりするなど、他の競技や大会では見られない光景も多く見られる大会となった。

会場には2日間を通して多くの観客が来場し、「おせー！」「あがるー！」など大きな声で選手たちに心を込めたエールを送った。いつもは静寂に包まれる築地本願寺も、この2日間ばかりは選手と観客たちの熱気に包まれ活気に満ち溢れていた。実際に来場した観客やライブ配信で観戦した観客たちにとっては、スポーツの大会という概念が大きく破られ、スポーツの新たな可能性を予見させる大会となったことだろう。

パラ・パワーリフティング競技では、来年2月のドバイワールドカップと6月のマンチェスターワールドカップの結果を経て、パリパラリンピックの出場選手が決定される。
日本と海外の壁がまだまだ厚いというのがパラ・パワーリフティングの世界の現状だが、日本人選手たちは真っ直ぐな眼でドバイ、マンチェスター、そしてパリやその後のロスパラリンピックを見据えている。

スポーツの常識を塗り替えた本大会のように、選手たちにはこれまでの常識や価値観を覆すような活躍を期待したい。

（文・撮影／湯谷夏子）

【優勝者一覧】※選手名(所属)／記録
〈女子〉
41kg級　成毛 美和(APRESIA Systems株式会社)／61kg
50kg級　堂森 佳南子／59kg
55kg級　中村 光(日本BS放送株式会社)／68kg
61kg級　龍川 崇子(EY Japan)／74kg ※日本新記録
67kg級　森﨑 可林／70kg
73kg級　水江 加奈子(アムジェン株式会社)／62kg
79kg級　田中 秩加香／95kg ※日本新記録
〈男子〉
49kg級　西崎 哲男(株式会社乃村工藝社)／132kg
54kg級　市川 満典(株式会社コロンビアスポーツウェアジャパン)／145kg
59kg級　光瀬 智洋(株式会社エグゼクティブプロテクション)／157kg ※日本新記録
65kg級　奥山 一輝(サイデン化学株式会社)／152kg
72kg級　日野 雄貴(RECON)／150kg
80kg級　大堂 秀樹(SMBC日興証券株式会社)／180kg
88kg級　田中 翔悟(三菱重工高砂製作所)／185kg
97kg級　佐藤 芳隆／171kg ※日本新記録
107kg級　佐藤 和人／187kg
107kg超級　中辻 克仁(日鉄環境エネルギーソリューション株式会社)／185kg