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2026年10月21日

愛知・名古屋2026アジアパラ競技大会

パラ陸上(競技3日目)金7個、銀5個、銅2個を獲得!髙桑早生がアジアタイ記録で有終の美を飾る

男子100m(車いすT51/52)で後半に追い上げ、大会新記録の17秒25でフィニッシュした佐藤友祈 | パラ陸上(競技3日目)金7個、銀5個、銅2個を獲得!髙桑早生がアジアタイ記録で有終の美を飾る|愛知・名古屋2026アジアパラ競技大会 | Glitters 障害者スポーツ専門ニュースメディア

男子100m(車いすT51/52)で後半に追い上げ、大会新記録の17秒25でフィニッシュした佐藤友祈


愛知・名古屋2026アジアパラ競技大会4日目の10月21日、名古屋市瑞穂公園陸上競技場で行われているパラ陸上では、日本勢が金7個、銀5個、銅2個の計14個のメダルを獲得した。

男子100m(車いすT51/52)、日本勢が表彰台を独占


男子100m(視覚障害T12)では久野竜太朗が10秒85のアジア記録で金メダルを獲得、石山大輝は10秒92の自己ベストを更新する走りで銀メダルを獲得し、日本勢がワンツーフィニッシュを飾った。
久野は、「もうちょっとタイムを伸ばすつもりだったので悔しい」と心境を語るも、「いろんな人に助けてもらって競技をやれているので、支えてくれた人たちの前で金メダルを獲れたのはすごくうれしい」と喜びを口にした。

男子100m(車いすT51/52)では、佐藤友祈が金メダル、大矢勇気が銀メダル、伊藤智也が銅メダルを獲得し、日本勢が表彰台を独占した。
佐藤はスタートから30メートル付近まで遅れをとったが、後半に追い上げを見せ、17秒25の大会新でゴール。病気による5年間のブランクを経て日本代表に返り咲いた東京パラリンピックの銀メダリスト・大矢が17秒74、パラリンピック3大会でメダルを獲得した63歳の現役レジェンド・伊藤は18秒23をマークした。

男子100m(車いすT51/52)で表彰台を独占し、メダルを掲げる大矢勇気(左)、佐藤友祈(中央)、伊藤智也(右) | パラ陸上(競技3日目)金7個、銀5個、銅2個を獲得!髙桑早生がアジアタイ記録で有終の美を飾る|愛知・名古屋2026アジアパラ競技大会 | Glitters 障害者スポーツ専門ニュースメディア

男子100m(車いすT51/52)で表彰台を独占し、メダルを掲げる大矢勇気(左)、佐藤友祈(中央)、伊藤智也(右)


今大会を迎えるにあたり「感情のコントロールが難しかった」と胸の内を明かした佐藤。先月、車いす陸上の日本代表として切磋琢磨してきた上与那原寛和さんが練習中の交通事故のため急逝し、「練習に集中はしているけど、頭の整理が追いつかない感じ」だという。「僕にできるのは上与那原さんの分までしっかり走り抜くこと」と自身を奮い立たせてレースに臨んだ。

東京パラリンピックでは400メートルと1500メートルで金メダルを獲得した佐藤だが、パリ大会で連覇を逃した。「しっかりパラリンピックで金メダルを獲得するように。返り咲けよ!」上与那原さんの言葉を胸に刻み、2年後のロス大会を見据え、しっかりと前を向いた。

男子やり投げ(視覚障害T12/13)、若生兄弟が揃ってメダル獲得


男子やり投げ(視覚障害T12/13)では、若生裕太と若生拳太が兄弟そろって表彰台に立った。
兄の裕太は、2投目に59メートル66のシーズンベストを出し金メダルを獲得。今大会が日本代表として臨む初めての国際大会となった弟の拳太は、3回目の投てきで58メートル60をマークし自己ベストを更新した。
兄・裕太は、「1投目は55メートル32だったが、あ、この方向性だなと投げた感触がよかった。応援のおかげで気持ちが高ぶり、味方がついているような感覚もあって攻めていけた」と試合を振り返り、「兄弟でメダルを獲れたのは本当に誇りに思うし、幸せな気持ちでいっぱい」と喜びを語った。

弟の拳太は、今回と同じ会場で開催された今年5月の「2026ジャパンパラ陸上競技大会」で試合中に全治3カ月のケガを負った。「8月に復帰してからも思うような結果が出ていなかったし、ケガをしたときと同じスタジアムということで怖さがあった」というが、「観客の応援のおかげで、そういう思いを払拭することができた。自分の強みは割り切れること。サイコロを振ったときに1が出ることもあれば6が出ることもあると割り切って『6よ来い』という気持ちでいけた。それが結果につながってよかった」と日本代表としてのデビュー戦を振り返った。

兄と同じレーベル遺伝性視神経症を発症したことを受け、パリパラリンピックに出場した裕太の背中を追いかけ、2024年の秋にパラ陸上を始めた弟の拳太。「兄弟で世界へ」とやり投げに取り組んだ当初から目標に掲げていたのが、自国開催として行われるアジアパラ競技大会への出場だった。それを見事に有言実行した。「日本代表として兄弟でこの大会に出場することができ、友人や家族の前で戦う姿を見せられた。人生最高の瞬間でした」そう語った拳太の胸に、銅メダルが輝いた。

弟の若生拳太(右)が見守る中、やりを投じる若生裕太(左) | パラ陸上(競技3日目)金7個、銀5個、銅2個を獲得!髙桑早生がアジアタイ記録で有終の美を飾る|愛知・名古屋2026アジアパラ競技大会 | Glitters 障害者スポーツ専門ニュースメディア

弟の若生拳太(右)が見守る中、やりを投じる若生裕太(左)

女子T64をけん引してきた髙桑早生がアジアタイ記録で有終の美を飾る

この日、あふれんばかりの笑顔と涙を浮かべたのは、18年に渡った競技生活にピリオドを打った、髙桑早生だ。
女子100m(義足・機能障害T64)決勝。パラ陸上選手として最後のスタートラインに立った髙桑の表情は、やや緊張感があったものの晴れやかだった。まっすぐとゴールを見つめ、スタートの合図とともに勢いよく飛び出した。ぐんぐんと後続選手を引き離し、自身の持つ13秒43のアジア記録と同タイムでフィニッシュ。思わず両手を大きく広げ、声をあげた。頬に涙がつたう。観客席に向かって何度もお辞儀をし、2位(13秒94)でゴールした山下千絵に駆け寄り抱きしめた。

「午前中も夜もたくさんの方が観に来てくれて、2020年の東京パラリンピックに向けて私たちが一生懸命積み上げてきたことが、この愛知・名古屋2026で一区切りついたかなと思う。そんな大会で、すばらしいレースで走らせてもらって幸せいっぱいです」
喜びをかみしめながら、笑顔で語った髙桑は、「今は無事終わってほっとしている。走り幅跳びと今日の100メートルを含めて、私史上最大のオーディエンスが会場にかけつけて応援してくれて、最後に名古屋という舞台を選んで本当によかったと思っている」と続けた。

笑顔とともに見せた涙。「泣かないんじゃないかなって思ってたんですけど、1番でフィニッシュしただけだったら涙はでてこなかったと思いますが、(13秒)43が出ちゃったので。思わず感情が爆発するってこういうことなんだなって」と、高揚感をにじませた。

女子100m(T64)決勝で、自身のアジア記録に並ぶ13秒43で駆け抜ける髙桑早生(右)と山下千絵(左) | パラ陸上(競技3日目)金7個、銀5個、銅2個を獲得!髙桑早生がアジアタイ記録で有終の美を飾る|愛知・名古屋2026アジアパラ競技大会 | Glitters 障害者スポーツ専門ニュースメディア

女子100m(T64)決勝で、自身のアジア記録に並ぶ13秒43で駆け抜ける髙桑早生(右)と山下千絵(左)


このレースで隣のレーンを走ったのは、5歳下の山下だった。
「13秒前半、あなたが目指さなきゃいけないのはこういう世界なんだよというのを見てもらえた」と髙桑。
その思いは、山下にもしっかりと届いていた。
「私がパラ陸上の大会に参加したときから髙桑選手は第一線で活躍されていて、私の憧れの選手だった。その憧れの選手と最後に一緒に走れて、すごく思い出に残る試合になったし、髙桑選手の記録をさらに超して私も名前を刻みたいなと思います」(山下)

「東京大会とパリ大会、2回のパラリンピックに出場できたことが一番の思い出」だと語る髙桑。最後に、2008年から18年間に及んだ競技人生をこのような言葉で綴った。「陸上競技と出会ったのはかなり運命だったと思う。試合の巡り合わせも、ものすごく運がいいキャリアを積ませて頂いた。何者でもなかった自分が、パラ陸上を通じて、アスリートという誇りを持たせてもらった。本当に感謝しかないです」

レース後、笑顔の山下千絵(右)と抱き合う髙桑早生(左) | パラ陸上(競技3日目)金7個、銀5個、銅2個を獲得!髙桑早生がアジアタイ記録で有終の美を飾る|愛知・名古屋2026アジアパラ競技大会 | Glitters 障害者スポーツ専門ニュースメディア

レース後、笑顔の山下千絵(右)と抱き合う髙桑早生(左)


走り、跳躍、投てき。パフォーマンスの裏に、その人生も映るパラ陸上。
自己ベストを目指し、この一瞬にすべてをかけるアスリートたちの真剣勝負に注目だ。

(文・張 理恵/撮影・中島 功仁郎)

【パラ陸上競技】
一般の陸上競技と同じく、「短距離走」「中距離走」「長距離走」「跳躍」「投てき」「マラソン」と多岐にわたった種目が行われる。
障がいの種類や程度に応じて男女別にクラスが分かれ、タイムや高さ、距離を競う。選手たちは、「義足」「義手」「レーサー」(競技用車いす)など、それぞれの障がいに合った用具を付けて、パフォーマンスを磨いている。
用具の進化によって、選手のパフォーマンスが上がっていることは事実だが、決して用具頼りの記録ではない。用具を使えば技術が上がるわけではなく、選手には使いこなすだけの身体能力、筋力、バランスなどが必須となる。
視覚障がいのクラスでは、選手に伴走する「ガイドランナー」や、跳躍の際に声や拍手で方向やタイミングなどを伝える「コーラー」などといったサポーターの存在も重要となる。選手とサポーターとの信頼なくしては成り立たず、息の合ったやりとりはふだんの練習の賜物でもある。
クラスによっては、オリンピックにも劣らないレベルの記録が出るなど、時代とともにレベルが高くなっており、毎大会トップ選手の記録更新が注目されている。多種多様な障がいの選手が一堂に会し、さまざまな工夫を凝らし、自分自身の限界に挑む姿が見られるのが、この競技の魅力でもある。
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