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2023年11月26日

第15回全日本パラ卓球選手権大会(肢体の部)

コンビネーションの真価が問われたダブルスも白熱!

世界トッププレーヤーの八木(右)と中村(左)がダブルスでもパリのメダルを目指す | コンビネーションの真価が問われたダブルスも白熱!|第15回全日本パラ卓球選手権大会(肢体の部) | Glitters 障害者スポーツ専門ニュースメディア

世界トッププレーヤーの八木(右)と中村(左)がダブルスでもパリのメダルを目指す

11月25~26日、HELSPO HUB-3アリーナ(東洋大学赤羽台キャンパス)では「第15回全日本パラ卓球選手権大会」(肢体の部)が開催された。大会2日目の26日にはダブルスが行われ、来年のパリパラリンピック出場を目指す八木克勝・中村望組や、宇野正則・松尾充浩組が優勝。さらに今後に期待が寄せられる若手たちも熱戦を繰り広げた。

フットワークの良さを武器にパリを目指す八木・中村組

この日、最も注目されていたのは立位混合ダブルスのクラス17以下(2人のクラスの合計)だ。ダブルスの世界ランキングが3位の岩渕光洋(クラス9)と同4位の友野有理(クラス8)、そして同6位の八木(クラス7)と同10位の中村(クラス10)がそれぞれペアを組み、エントリーしていたからだ。

しかし、岩渕は前日のシングルスをケガで棄権しており、それに伴って岩渕・友野組は棄権。3組による総当たりでのリーグ戦が行われた結果、八木・中村組が2試合をいずれもストレート勝ちで優勝し、ともにシングルスとあわせて二冠を達成した。

混合ダブルスがパリパラリンピックの種目となったことで昨年にペアを結成した八木と中村。1試合でも多く経験を積みたいと、今年はシングルスで出場する国際大会を合わせるようにして、ダブルスにもエントリーしたという。パラの試合には5大会、さらに健常の大会にも出場したなか、「今回が一番いいゲームができたと思う」と2人は大きな手応えを口にした。

世界ではクラス9とクラス8のペアが多く、それよりも障がいが重いクラス7の八木は「ゲームの中で常に苦しい状態にある」と語る。しかし、2人には大きな武器がある。いずれも障がいがあるのは上肢で、フットワークを強みにしているという点だ。

「(2人あわせて)4本の足が良い状態なので、機動力を生かしたプレーが僕たちの強み。そういうペアはなかなかいないので、そこで勝負していく」と八木。中村もその言葉に強くうなづいた。

7月の台中オープンでは銅メダルを獲得し、初めて表彰台に上がるなど、自信を深めてきた。今後さらに成長するために不可欠なのが、サーブレシーブだと考えている。

「ダブルスでとても重要となのがサーブレシーブ。それを徹底することで、その後のラリーの展開も楽になる。サーブレシーブは個々の練習でもできるものなので、しっかりとやっていって、そのうえでその後の展開についてどうしていくかを詰めていけば自ずと結果は出るんじゃないかなと思っています」と八木。中村も「以下同文(笑)」としながらも、さらにこう付け加えた。

「ダブルスをすることによって自分の成長につながっていて、フォアハンドが良くなってきているなと感じています。それを生かして、今までは後ろに下がった時になんとか入れるで終わっていた部分のボールの質を高めていきたいと思っています」

八木はすでに10月のアジアパラ競技で男子シングルスで金メダルに輝き、パリ出場が内定しているため、あとは中村が女子シングルスでパリ行きの切符を獲得できるかどうかにかかっている。ダブルスについては、3月まで続くシングルスのポイントレースに注力する中村にあわせたスケジュールで動いていく予定だ。

宇野・松尾組はパリ出場への大一番に向けての弾みに

国内トップ2の宇野(左)と松尾(右)はダブルスでのポイント獲得でパリ行きの切符を狙う | コンビネーションの真価が問われたダブルスも白熱!|第15回全日本パラ卓球選手権大会(肢体の部) | Glitters 障害者スポーツ専門ニュースメディア

国内トップ2の宇野(左)と松尾(右)はダブルスでのポイント獲得でパリ行きの切符を狙う

車いす男子ダブルスクラス4以下では、7組が出場。2ブロックに分かれての予選リーグを行い、それぞれ上位2チーム、あわせて4組による決勝トーナメントが行われた。その結果、昨年に続いて頂点に立ったのは、宇野・松尾ペア。全4試合をストレート勝ちでの完全優勝を果たした。

いずれもクラス2の2人は、前日のシングルスでは宇野が優勝、松尾が準優勝と車いすクラス2をけん引する存在の2人。ダブルスは2019年からペアを組み、海外ツアーにも参戦してきた。「相思相愛」と語るほど、コンビネーションは抜群。2人の間を割るセンターラインのボールも、どちらが取るかを迷うことなく瞬時に判断できるほど、今ではお互いに相手の動きが予測できるまでになった。

現在はパリパラリンピックの出場を目指しており、今年はすでに国際大会に9回出場。海外勢相手にも柔軟に対応することができるようになってきたという手応えを感じている。5月の台北オープンでは銀メダル、台中オープンでは銅メダルと立て続けに表彰台に上がった。

なかでも自信をつかんだのは、5月のスロベニアオープンだ。準々決勝ではパラリンピックでメダルを獲得した実績を持ち、現在も世界トップクラスである韓国の強豪ペアと対戦。結果的には敗れはしたものの、フルセットにまでもっていくことができたことに、自分たちの大きな成長を感じた。

「自分たちのイージーミスが少なくて、粘り強く戦うことができました。試合前にはしっかりと分析もしていたので、相手の弱点をついてミスを誘うような展開もできた。自分たちがミスさえしなければ、トップとも同じ土俵で戦うことができるまでに戦力が上がってきていることを実感することができました」と宇野は語る。

現在、2人のダブルスの世界ランキングはいずれも20位台にあり、パリ出場は厳しい状況にある。しかし、宇野も松尾も最後まで諦めるつもりはない。2人が「ラストチャンス」として臨むのが、3月にイタリアとスペインで行われる大会で、目指すは表彰台だ。残り3カ月、大一番に向けて練習に励む。

“同級生"コンビで初優勝の阿部・辻村組

良きライバルであり、信頼し合える仲間の阿部(左)と辻村(右)は今後も切磋琢磨していく | コンビネーションの真価が問われたダブルスも白熱!|第15回全日本パラ卓球選手権大会(肢体の部) | Glitters 障害者スポーツ専門ニュースメディア

良きライバルであり、信頼し合える仲間の阿部(左)と辻村(右)は今後も切磋琢磨していく

今大会、最も出場ペアが多かった立位男子ダブルスのクラス18以下では、阿部隼万・辻村琢光(いずれもクラス9)組が優勝した。4つのブロックに分かれて行われた予選リーグ、さらには準々決勝、準決勝と5試合連続でストレート勝ち。クラス10のシングルス覇者である舟山真弘と金野駿(クラス8)のペアと対戦した決勝も、11-3、11-5とあっという間に2ゲームを先取すると、第3ゲームは一時は3-5とリードを許したものの、中盤に逆転をし、粘る相手を退けた。ダブルスでは阿部は昨年、岩渕と組んで優勝。一方、辻村にとっては初の日本一の座となった。

大会前の練習は4時間ほどと即席だったこともあり、予選リーグの序盤はお互いに動きがかたかったというが、お互いに手の内を知っている者同士、以前も何度かダブルスを組んだ経験もあった2人は、試合を重ねるごとに徐々にコンビネーションを高めていった。特に、3位となった玉井英雄(クラス8)・中島拓哉(クラス9)組と対戦した予選リーグ最後の試合で、2人そろって決勝トーナメントに向けて大きな手応えをつかんでいた。

お互いに1999年、24歳同士の阿部と辻村。ずっと切磋琢磨してきた良きライバルでもあり、ふだんから連絡を取り合う仲でもある。前日のシングルスでは準決勝で対戦し、3-1で勝利を収めた阿部が決勝も制して優勝。辻村も3位決定戦をフルセットの末に勝ち、そろって表彰台に上がった。

「阿部はプレーに華があって、自分が見ていても楽しい。シングルスで対戦する時は本当に嫌な相手だけれど(笑)、ダブルスでは頼りがいがある」と辻村。阿部も「辻村は練習熱心でリスペクトできる選手で、性格的な面でも気が合う仲。同世代だからこそ分かり合える部分もあるので、心強い存在」と全幅の信頼を寄せる。

選手として台頭した時期は辻村が先で、2017、18年には日本代表として国際大会にも出場した。今は代表復帰を目指し、来年2月の選考会での優勝が目標だ。一方、阿部は18年から強化指定選手入りし、現在の世界ランキング(男子シングルス)は32位。16年リオ、東京2020と2大会連続でパラリンピックに出場し、現在世界ランキング8位の岩渕に次ぐ存在だ。ポイントレースでのパリ行きは厳しいため、来年3月の世界最終予選での一発勝負にかけている。

そして将来的には、2人そろって28年ロサンゼルスパラリンピックの舞台に立つことが目標だ。

女子車いすクラスに現れた新鋭の高松・池山組

成長著しい高松(右)と池山(左)は世界に思いを馳せ始めている | コンビネーションの真価が問われたダブルスも白熱!|第15回全日本パラ卓球選手権大会(肢体の部) | Glitters 障害者スポーツ専門ニュースメディア

成長著しい高松(右)と池山(左)は世界に思いを馳せ始めている

車いす女子ダブルスのクラス5以下で優勝したのは、髙松海優(クラス2)・池山優花(クラス3)組だ。第1ゲームを11-7で先取すると、第2ゲームは先に相手がゲームポイントを迎えるピンチにも動じずに追いつくと、そのまま連続ポイントを奪って12-10で凌ぎ切った。その余勢を駆って、最終ゲームは11-5と圧倒し、ストレート勝ちを収めた。

昨年ペアを組んで練習をするようになったという高松と池山。それまではお互いに混合ダブルスを組み、男子選手に引っ張ってもらっていたという。人見知りという性格も共通しているといい、ペア結成直後は「メンタルが弱くて、すぐに負けていた」と語る。

しかし徐々にお互いを知り、チームの先輩たちに助言を受けながらコンビネーションを図ってきた。今大会に向けては、毎週のように三重在住の池山が高松の練習拠点である大阪に足を運び、練習を重ねてきたなかでの優勝だった。

2人のプレースタイルは、まさに真逆だ。ネット際やサイドを狙って相手が嫌なコースに打って粘り強さが身上の高松に対し、障がいを負う前、高校まで陸上競技部に所属し、100m、走り幅跳びの選手だったという池山は、生粋の攻めのスタイル。「緩くて短い球」の高松と「速くて長い球」の池山という凹凸コンビだからこその相性の良さを感じている。

ともに競技歴は約2半年だが、前日のシングルスでは、髙松が3位、池山がベスト4と著しい成長を見せている。今大会で競技志向がさらに高まったという高松は「もっと練習時間を増やしていきたい」と意欲を燃やす。「まだ口に出しては言えない」としながらも、「心の奥底に秘めています」とパラリンピックへの思いを語った。そして23歳の若きホープでもある池山も「もちろん」と語り、高みを目指すことを示唆。陸上時代には東海大会に出場した実績を持つだけに、アスリートとしてのポテンシャルの高さは十分にある。いずれも、今後が楽しみな存在だ。

(文・斎藤寿子/写真・竹内圭)

【優勝者一覧】
◎男子ダブルス
クラスMD4(※クラス合計4以下):松尾充浩(ベリサーブ)・宇野正則(COSMO)
クラスMD8:北川雄一朗・中本亨(ドマーニ卓球クラブ)
クラスMD14:金子和也(TIM総合法律事務所)・来田啓幹(大阪パラ卓球連絡会)
クラスMD18:阿部隼万(キンライサー)・辻村琢光(ユナイトアンドグロウ)

◎女子ダブルス
クラスWD5:高松海優・池山優花(Fantasista)
クラスWD10:田野倉祥子(ディスタンス)・須藤泰子(茨城フェニックス)
クラスWD20:石河恵美(ラポール卓友会)・工藤恭子(熊本身障者卓球協会)

◎混合ダブルス
クラスXD10:山本秀栄・勝田凛華(東京身障卓球連)
クラスXD17:八木克勝(愛知ファイヤーズ)・中村望(花野井クラブ)
クラスXD20:高橋純平・山崎玉乃(SST富士山)

【パラ卓球】
 男女別に障がいの種類や程度によって1〜11までのクラス分かれており、クラス1〜5は車椅子、6〜10は立位、11は知的障害と分けられている。試合は1ゲーム11点先取で、3ゲームを先に取った方が勝ちとなる。
 卓球台のサイズやネットの高さ、ボールやラケットなどの用具は、一般の卓球と同じ。ルールもほとんど変わらない。ただし、車いす選手のサービスは、相手コートで一度バウンドし、エンドラインを越えない場合は「レット(ノーカウント)」となり、やり直しとなる。また、車いすのダブルスでは、センターラインを超えて移動することはできないため、レシーバーがサービスをリターンした後は、どちらの選手が打ってもOK。
 障がいの種類や程度によって、プレースタイルはさまざま。たとえば車いすの選手は、左右に素早く動くことが難しいため、卓球台の近くでプレーすることが多い。そのため、近距離でのスピーディなラリーが展開される。また、世界には足でトスを上げ、ラケットを口でくわえて打つ、両腕欠損の選手もいる。
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