Glitters 障害者スポーツ専門ニュースメディア
2023年2月5日

2023ジャパンパラ車いすラグビー競技大会

日本が「チーム力」で全勝優勝!パリ出場権獲得に向け弾み

攻守にわたりチームを牽引するキャプテンの池透暢 | 日本が「チーム力」で全勝優勝!パリ出場権獲得に向け弾み|2023ジャパンパラ車いすラグビー競技大会 | Glitters 障害者スポーツ専門ニュースメディア

攻守にわたりチームを牽引するキャプテンの池透暢

2月2日から2月5日までの4日間、「2023ジャパンパラ車いすラグビー競技大会」が千葉ポートアリーナ(千葉市)で行われ、日本は予選ラウンドから決勝戦までの7戦全勝で完全優勝を果たした。日本チームの競技力向上を目的に国際大会として開催しているジャパンパラ大会としては、2018年5月以来、約4年半ぶりに海外勢を招聘して行われ、アメリカ(世界ランキング1位 ※)、オーストラリア(同2位)、フランス(同5位)、そして日本(同4位)の4カ国が出場した。※2022年10月17日現在のランキング

車いすラグビー日本代表にとって今年最大の目標は、「パリパラリンピックの出場権獲得」。6月29日~7月2日には、来年のパリパラリンピック出場権をかけた「2023 ワールド車いすラグビー アジア・オセアニア チャンピオンシップ(AOC)」が東京で開催され、アジア・オセアニアゾーンに与えられた「1枠」を巡る熾烈な戦いが繰り広げられることは必至だ。今大会はAOC前最後の貴重な実戦の場となり、日本は「ラインナップ(コート上4選手の組み合わせ)」の強化や、一つひとつのプレーの精度を「極める」ことをテーマに掲げ試合に臨んだ。大会は、予選ラウンドで全チームの総当たり戦を2回行い、その上位2チームが決勝戦を、予選3位・4位のチームが3位決定戦に進む方式で行われた。

開幕戦となった日本の初戦はフランスとの対戦。フランスは「開催国枠」で、すでにパラリンピック出場権を獲得しているが、5月に行われるヨーロッパ選手権を見据え、登録選手全員が東京パラリンピックと昨年の世界選手権に出場した“ベストメンバー"で今大会に臨んだ。世界屈指のスピードを誇るハイポインターを擁するフランスは速い試合展開に持ち込むが、日本は互角以上に対応してみせリードを奪う。さらに、ラインナップを次々と入れ替える「ローテーション」で相手を翻弄させ、攻守において主導権を握るとじりじりとフランスを引き離した。予選ラウンド1回目の対戦では56-50、2回目の試合は57-53で日本が勝利した。
乗松隆由(左・白20番)と乗松聖矢(右・白22番)が息のあったディフェンスでサラ・アダムをブロックする | 日本が「チーム力」で全勝優勝!パリ出場権獲得に向け弾み|2023ジャパンパラ車いすラグビー競技大会 | Glitters 障害者スポーツ専門ニュースメディア

乗松隆由(左・白20番)と乗松聖矢(右・白22番)が息のあったディフェンスでサラ・アダムをブロックする

現在、世界ランキング1位のアメリカは、ベテランと若手選手の混合チームとして今大会に臨み、登録メンバー9名中3名が国際大会デビューとなった。今大会最年少・15歳のタロン・ティーグや、アメリカ代表史上初の女性選手となるサラ・アダムの存在感あるアグレッシブなプレーが光り、選手層の厚さをうかがわせた。

日本はアメリカ戦でも多彩なラインナップをコートに送り込み、なかでも、池透暢、中町俊耶に乗松隆由、乗松聖矢の乗松兄弟が入るラインナップが初めて国際大会のコートに登場し会場を沸かせた。「ディフェンスが強みの乗松(兄弟)に、池、中町というパスを出せる選手を組ませることで、ボールをキャッチする能力、スペースを作る能力の高いラインナップが出来上がった」と、ケビン・オアー日本代表ヘッドコーチ(HC)。その言葉を体現するかのように、乗松2人が息の合ったタイミングで相手のハイポインターをブロックし、池のロングパスと中町のランでトライを奪うシーンは今大会の名場面のひとつとなった。2019年以来の代表戦出場となった乗松(隆)は「世界に通用するプレーができた」と手応えを口にした。予選ラウンドでのアメリカとの対戦は、1試合目が53-44、2試合目は57-46と日本が2勝をあげた。
成長著しい橋本勝也。力強いチェアワークでクリス・ボンドを振り切る | 日本が「チーム力」で全勝優勝!パリ出場権獲得に向け弾み|2023ジャパンパラ車いすラグビー競技大会 | Glitters 障害者スポーツ専門ニュースメディア

成長著しい橋本勝也。力強いチェアワークでクリス・ボンドを振り切る

そして、アジア・オセアニアゾーン最大のライバルであるオーストラリアは、絶対的エースのライリー・バットを欠くなか、昨年11月の次世代選手たちによる国際大会「三井不動産2022車いすラグビーSHIBUYA CUP」に出場した選手2名が名を連ね、また、全チーム最多となる3名の女性選手がメンバー入りしたことも特徴的だ。すでに、パリの2大会先、自国開催となる2032年のブリスベンパラリンピックも視野に入れた育成と強化が始まっているといい、今大会はキャプテンのクリス・ボンドをはじめとするベテラン勢と若手の融合に努めた。

オーストラリアとの2戦目。4人全員が経験豊富なスターティングラインナップで臨んだオーストラリアは、いずれも日本のインバウンドミスから2本のターンオーバーを奪い、日本が追いかける展開となる。「負けているメンタルからどう戦うのか、学びのあるピリオドだった」とキャプテンの池が振り返るようにタフな時間帯が続く。その流れを変えたのが、長谷川勇基―小川仁士―島川慎一―橋本勝也による急成長中のラインナップだ。長谷川、小川のミスマッチを作る体当たりのディフェンスもさることながら、日本の新たな武器となる、島川のロングパスからの橋本のトライで、チームに勢いをもたらした。そして、その勢いを引き継いだ今井友明―小川―池崎大輔―池が前半残り0.7秒でラストトライを決め、27-27の同点で折り返した。後半、オーストラリアは若手選手を次々と投入し日本が主導権を握る展開となった。それでも第3ピリオド残り0.1秒、試合終了まで残り0.8秒のタイミングでいずれも壁谷知茂がトライを決め、最後のブザーが鳴るまでハードワークし続けたことを証明した。オーストラリアとの対戦は1試合目が51-40、2試合目は58-48で勝ち、これで日本は予選ラウンド6戦全勝で決勝へと駒を進めた。
攻撃の柱、池崎大輔。圧倒的なスピードを武器にトライを量産した | 日本が「チーム力」で全勝優勝!パリ出場権獲得に向け弾み|2023ジャパンパラ車いすラグビー競技大会 | Glitters 障害者スポーツ専門ニュースメディア

攻撃の柱、池崎大輔。圧倒的なスピードを武器にトライを量産した

1300人の観衆が見守るなか、ティップオフの時を迎えた決勝戦。日本が迎え撃つは予選ラウンド4勝2敗のフランスだ。日本は立ち上がりから強いプレッシャーをかけ、戦略のひとつにもなるタイムアウトをフランスから削り、第2ピリオド開始直後にはフランスが取れるタイムアウトはゼロとなった。メンタル的に有利な状況を作った日本は、ローテーションを繰り返し試合のリズムを早める。しかし、フランスも簡単には崩れない底力でターンオーバーを立て続けに奪うと、27-27で前半を終了した。

日本ボールで始まった第3ピリオド、池崎のパスカットで2点差にすると日本のリードが続く。それでも、東京パラリンピックでトライ王に輝いたジョナサン・イベルナ、スピードスターのセバスチャン・ベルダン、さらに重量のあるディフェンスを強みとするセドリキ・ナンカンと、タレントぞろいのフランスはそれ以上のリードを許さない。けれども、日本の勝利への執念が上回った。最終ピリオドでローポインターの長谷川が決死の守備で相手の動きをとめると、島川のタックルで追い打ちをかける。そして池崎の4連続トライに最後は池がトライし、57-54でフランスを封じ込め、日本が全勝優勝を果たした。会場からは日本の勝利を喜び、両チームの健闘をたたえる大きな拍手が送られ、コートのすぐそばで応援した車いすの少年は「すごかった!」と目を輝かせた。

決勝を終え、島川は「予想通りきつい展開ではあったが、自分たちのやるべきラグビーをしっかりやれて、みんなでハードワークした結果が勝ちにつながった」と引き締まった表情で語り、オアーHCは、「今大会では(世界選手権での経験から)メンタルタフネスの強化を第一に考えていた。決勝では一度追いつかれたところから、また突き放すことができ、メンタルタフネスを鍛える良い機会となった。また、若手選手たちが多くの出場機会を得ることができ、チーム全体にとって収穫のある大会になった」と総括した。

そして池崎は、「自分たちには世界一を獲る力がある。ただ、細かい修正点に気づかされた大会でもあった。車いす操作やハードワークするメンタル、みんなで支え合いながらパリ大会の出場権を得るということに照準を合わせ、チーム一丸となって取り組んでいきたい」と言葉に力を込めた。

地道に積み上げてきたことが「自信」へとつながった今大会の優勝。パリパラリンピック出場権をかけた6月のアジア・オセアニアチャンピオンシップに向け、日本はここからさらにギアを上げていく。

(文・張 理恵)

■結果一覧
<最終順位>
優勝 日本
準優勝 フランス
3位 アメリカ
4位 オーストラリア

<試合結果(日本戦)>
2月2日(木) 
日本 〇 56-50 ● フランス
日本 〇 53-44 ● アメリカ
2月3日(金) 
日本 ◯51-40 ● オーストラリア
日本 ◯57-53 ●フランス
2月4日(土)
日本 〇 57-46 ● アメリカ
日本 〇 58-48 ● オーストラリア
2月5日(日)
<決勝戦> 
日本 〇 57-54 ● フランス

【車いすラグビー】
 1チーム4人で、8分間のピリオドを4回行い、その合計得点を競う。バスケットボールと同じ広さのコートでプレーし、ボールを持った選手の車いすの車輪2つが、敵陣のゴールラインに乗るか、もしくは通過するかでトライが認められ、1点が入る。
 選手には障がいの程度に応じて持ち点があり、障がいが重い方から0.5~3.5までの7クラスに分けられている。持ち点の合計が8点以内で編成された4人が出場できる。ただし、女子選手が含まれる場合は1人につき0.5点の追加が許可される。
「ラグ車」と呼ばれる競技用車いすは「攻撃型」と「守備型」の2種類。主に持ち点が大きい選手が乗る「攻撃型」は、狭いスペースでも動きやすいようにコンパクトな作りになっている。一方、主に持ち点が小さい選手が乗る「守備型」には、前方に相手の動きをブロックするためのバンパーが付けられている。
車いすラグビーは、四肢麻痺など比較的障がいの重い人でもできるスポーツとして考案された男女混合の競技。しかし、パラリンピック競技で唯一、車いすによるタックルが認められており、「マーダー(殺人)ボール」という別名がつくほど、激しいプレーの応酬が魅力の一つ。その激しさは、ボコボコに凹んだ車いすのスポークカバーを見れば一目瞭然だ。
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