Glitters 障害者スポーツ専門ニュースメディア
2021年11月14日

第34回全日本障害者ライフル射撃競技選手権大会

岡田和也がライフル伏射で優勝、ビーム種目では日本新記録樹立

混合50mライフル伏射(SH1)を制した岡田和也 | 岡田和也がライフル伏射で優勝、ビーム種目では日本新記録樹立|第34回全日本障害者ライフル射撃競技選手権大会 | Glitters 障害者スポーツ専門ニュースメディア

混合50mライフル伏射(SH1)を制した岡田和也

高知県立春野総合運動公園ライフル射撃場で行われた日本一決定戦「第34回全日本障害者ライフル射撃競技選手権大会」。大会2日目の14日には50メートル種目とビーム種目の競技が行われた。

パラリンピック種目でもある混合50mライフル伏射SH1(運動機能障害)には前日のエアライフルで優勝した片山友子(株式会社ベリサーブ)や、東京パラリンピック代表の渡邊裕介(渡辺石灰株式会社)など5選手がエントリー。
シリーズ前半は「低空飛行」ながらも、最終シリーズには肝を据えて撃つことができたという岡田和也(サイネオス・ヘルス・コマーシャル株式会社)が613・7点で優勝した。
強化指定選手の選考を兼ねた今大会、同種目で選考の基準となる614点を目標にしていた岡田は「0・3点届かなかった。失点が響くので1点でも失点を減らさなければいけない。確信を持って撃てるような射撃スタイルに変えていかなければ」と課題をあげた。そして、来年3月に行われる(次年度前期の)強化指定選手選考会では目標をクリアし、同6月にフランスで開催されるワールドカップで世界選手権出場に必要な基準点を是が非でも取って帰ってきたいと意気込みを語った。

また、この種目では4位と結果が振るわなかった、東京パラリンピック日本代表の渡邊裕介(渡辺石灰株式会社)は大会を振り返り、「パラリンピック後に義手をリニューアルして、姿勢でも下半身の位置を変える大きな変更をしたが、いけるという手応えを得ることができた。パラリンピックに出場して想像だったものが現実化し、練習でもイメージしやすいのは大きな武器になった。深い練習ができるようになったのは成長」だと、前向きにとらえた。なお、女子ライフル3姿勢SH1では武樋いづみ(高知県障害者スポーツ射撃協会)が1045点で優勝した。

東京パラリンピック代表の渡邊裕介 | 岡田和也がライフル伏射で優勝、ビーム種目では日本新記録樹立|第34回全日本障害者ライフル射撃競技選手権大会 | Glitters 障害者スポーツ専門ニュースメディア

東京パラリンピック代表の渡邊裕介

ビーム種目では次々と日本記録が樹立された。
ビームライフル肘撃ち60発SH1は森田耕二(大阪市長居障がい者ライフル射撃クラブ)が621・5点の日本新記録を出し優勝、同種目では森田を含む出場5選手全員がそれまでの日本記録を上回る成績を収めて競技を終えた。

ビームライフル肘撃ち60発SH2は、増田眞美子(埼玉県身体障害者ライフル射撃連盟)が592・5点で優勝、ビームライフル自由姿勢40発では宮城柚那(大阪府立稲スポーツセンター)が424・4点で、ビームライフル立射60発SH1は、渡辺英雄(大阪市長居障がい者ライフル射撃クラブ)が483・4点で制した。そして、ビームピストル60発SH1では長谷部信夫(埼玉県身体障害者ライフル射撃連盟)が498点の日本新記録で優勝を果たした。

日本障害者スポーツ射撃連盟によると、東京2020大会がきっかけとなり、射撃のオリンピックとパラリンピック競技で競技団体間の連携がより強くなったという。2019年1月にパラリンピック競技の選手がナショナルトレーニングセンターを利用できるようになってからは、アスリート同士の交流が持てるようになり、東京パラリンピック前にはオリンピックとパラリンピックの射撃競技に出場する選手たちが合同で記録会を行った。

来月12月には、健常者アスリートとパラアスリートの男女2名がペアを組む「オリパラミックス大会」の開催が予定されており、パラ射撃からは4名の選手が出場する。東京パラリンピック代表の佐々木大輔(モルガン・スタンレー・グループ株式会社)は「健常者と障がい者が一緒にスポーツをするというのが目指すべきところ」だと、同大会の開催を歓迎した。

真剣勝負を終えると心と体を解放し、選手たちの間には和やかな雰囲気も漂った全日本選手権。今後のパラ射撃手たちの活躍に期待したい。

【優勝者一覧】
FR60PRMW-SH1 岡田和也(サイネオス・ヘルス・コマーシャル株式会社)
FR3X40W-SH1 武樋いづみ(高知県ライフル射撃協会)
BR60TMW-SH1 森田耕二(大阪市長居障がい者ライフル射撃クラブ)
BR60TMW-SH2 増田眞美子(埼玉県身体障害者ライフル射撃連盟)
BR40FMW  宮城柚那(大阪府立稲スポーツセンター)
BR60-SH1 渡辺英雄(大阪市長居障がい者ライフル射撃クラブ)
BP60MW-SH1 長谷部信夫(埼玉県身体障害者ライフル射撃連盟)

(文・張理恵、撮影・竹内圭)

【射撃】
制限時間内に規定の弾数を撃ち抜き、その合計得点を競う競技。「ライフル」と「ピストル」があり、それぞれ障がいの種類や程度、撃つ姿勢によってクラスが分かれている。
的の中心から離れるほど得点は低くなるが、例えばエアライフルは標的までの距離が10m。その距離でパラリンピックに出場するようなトップクラスの選手は、5円玉の穴ほどしかない0.5mmの大きさの「10点台」を撃ち抜くのは当然の世界。さらに中心からわずかなズレによって「10.0」から「10.9」まで細かく刻まれるため、コンマの差で勝敗が分かれる。
寸分の狂いなく撃ち抜くには、高い集中力が必要で、自分自身の呼吸のリズムや心臓の鼓動までもコントロールする必要がある。しかし、時間制限内に60発を撃たなければいけないため、一発にかける時間は意外にも少ない。次々と撃ち込んでいかなければならず、シューティングフォームを体にしみこませ、いかに短い時間に集中力を高められるかが重要となる。
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