2021年3月21日

第32回日本パラ陸上競技選手権大会
T11唐澤、和田が5000mで大会新記録

大会新記録を出した和田と唐澤

3月20、21日の2日間、第32回日本パラ陸上競技選手権大会が駒沢オリンピック公園総合運動場陸上競技場(東京都)で開催された。本大会は新型コロナウイルスの感染対策を講じた上で、久々の有観客で行われた。

大会初日、5000mT11決勝で、東京パラリンピックが内定している唐澤剣也(群馬社福事業団)と和田伸也(長瀬産業)が熱い戦いを見せた。お互いのプレースタイルを良く知っていることもあり、序盤・中盤は探り合いのこう着状態が続く。唐澤リードの中迎えたラスト一周の場面、残り200m付近から後ろにつけていた和田がスパートをかけた。どんどん縮まっていく両者の距離だったが、最後は唐澤が和田の猛追を振り切り、大会記録を約3秒上回る15分30秒59で優勝。2位との差はわずか0秒23という接戦を制した。

100mT64では大島健吾(名古屋学院大学)がスタート直後から先頭へ飛び出し、終始首位のまま後続を引き離しゴール。大会タイ記録の11秒70で優勝した。「今回義足を新しくしたり、設置位置などを変えて挑んだ大会だったが、この記録でガッカリ。アジア記録の11秒47を切るつもりでしたし、自信もあったのでタイムとして現れなかったことが残念。まだ初戦だったので、これから修正を加えながらトレーニングに取り組み、6月までには11秒47を切りたい。」と今後に向けての意気込みを見せた。

終始先頭をキープし逃げ切った大島

雨風が強く悪天候に見舞われた大会2日目、T54で樋口政幸(プーマジャパン)が800m、1500mで優勝した。初日の5000mでも優勝を果たしており、本大会三冠。「アスリートはやはり大会がないと存在価値があやふやになってしまうなと、久しぶりのレースで改めて感じた。コロナ禍の中、全体的なパフォーマンスアップを目指して、負荷をかけたローラー、ハンドバイクなどを使って動作の中での出力を上げることを意識してトレーニングに取り組んだ。シーズン入りしたばかりなので、冬のトレーニングがどの程度スピードに繋がってきているかを確認できたので良かった。」と笑顔を見せた。

（文・中島功仁郎、撮影・峯瑞恵）

【記録一覧】
●アジア新記録
T52 男子 100m 17秒19 大矢勇気(ニッセイNC)
T61 女子 100m 18秒95 湯口英理菜(日本体育大学)
T63 女子 100m 16秒22 兎澤朋美(日本体育大学)

●日本新記録
F34 女子砲丸投 4m15 上部美帆(兵庫パラ陸協)
T45 男子 100m 11秒58 三本木優也(京都教育大)
T13 男子 400m 50秒24 福永凌太(中京大クラブ)
F52 男子円盤投 13m06 篠田義人(岐阜AC)
T13 男子走幅跳 6m66 福永凌太(中京大クラブ)

【陸上】
　一般の陸上競技と同じく、「短距離走」「中距離走」「長距離走」「跳躍」「投てき」「マラソン」と多岐にわたった種目が行われる。
　障がいの種類や程度に応じて男女別にクラスが分かれ、タイムや高さ、距離を競う。選手たちは、「義足」「義手」「レーサー」（競技用車いす）など、それぞれの障がいに合った用具を付けて、パフォーマンスを磨いている。
　用具の進化によって、選手のパフォーマンスが上がっていることは事実だが、決して用具頼りの記録ではない。用具を使えば技術が上がるわけではなく、選手には使いこなすだけの身体能力、筋力、バランスなどが必須となる。
　視覚障がいのクラスでは、選手に伴走する「ガイドランナー」や、跳躍の際に声や拍手で方向やタイミングなどを伝える「コーラー」などといったサポーターの存在も重要となる。選手とサポーターとの信頼なくしては成り立たず、息の合ったやりとりはふだんの練習の賜物でもある。
　クラスによっては、オリンピックにも劣らないレベルの記録が出るなど、時代とともにレベルが高くなっており、毎大会トップ選手の記録更新が注目されている。多種多様な障がいの選手が一堂に会し、さまざまな工夫を凝らし、自分自身の限界に挑む姿が見られるのが、この競技の魅力でもある。